書評/映画評

樺沢紫苑が選ぶ!! 2017年映画ベストテン (その3)

樺沢紫苑が選ぶ!! 2017年映画ベストテン。

結構長文なので、数日かけて発表しています。

第1位、第2位
https://kabasawa3.com/blog/book-movie/2017movies_best10_vol1

第3~5位
https://kabasawa3.com/blog/book-movie/2017movies_best10_vol2
を、昨日までに発表しました。

本日は、第6~10位を発表します。

それでは、ベスト6の発表です。








■第6位 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』

『最後のジェダイ』が、何位になるのか?
と興味津々で見守っていた人も多いでしょうが、

今年の私のベストテンの他作品と比べてみて
1~3位というのはありえない。

それだけ、1~3位のレベルが高いということ。

じゃあ、9、10位かというと、それ以上には楽しめた。

『ブレードランナー 2049』とどちらが上というと、
微妙に迷った末、
『ブレードランナー 2049』の次、
第6位ということになりました。

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は、
ファンの間では賛否両論、激しい意見がかわされています。

「娯楽映画としておもしろい!」という賛成派。
「スター・ウォーズの過去のお約束やルールをぶち壊した駄作だ!」という
反対派です。

私は、
「映画は、おもしろければいいんじゃないの」
ということで、
『フォースの覚醒』よりも、エンタメ的に楽しめたし、
手に汗握る展開になっていましたから、基本、肯定派です。

とはいえ、「すげーーーおもしろい!!」
というほどのテンションでもない。

私の中で、もはや『スター・ウォーズ』は、
たくさんある映画の一つという感覚。
人生を賭けてみるほどのスペシャルな作品でもない。

まあ、ディズニー映画なのですから、
こんなものでしょう。

そこそこ楽しめたので、ありがとう。
という感じです。

「スター・ウォーズ」というのは、
「スカイウォーカー・ファミリー」の物語であったわけですが、
本作によってフォースは誰でも持っている、
という話になりました。

今までの「血縁しばり」のままストーリーを展開させると、
壮大な銀河を舞台に「もの凄いこじんまりとした話」にならざるをえない。

それを考えると、今回の「血縁しばり」をはずした、
というのは当然、必然の流れではないか、とも思うのです。

私は、「スター・ウォーズ」ファンというよりは、
一映画ファンとして「スター・ウォーズ」を前向きに楽しみたい
と思っています。

そんな思いを含めてバランスの第6位でした。


■第7位 『SING/シング』

今年見た中で、べたな娯楽映画として、
大好きな作品。

『ラ・ラ・ランド』も、良い映画でしたが、
私は圧倒的に『シング』派。

私はよく、
「今を生きる」「人生を楽しもう」ということを言いますが、
その精神が、この映画では極めて具体的に描かれていました。

「歌が好き」なのに、理由あって歌えない環境にいる登場人物たち。
それが、コンテンストをきっかけに、自分の人生の転機として、
「歌」に挑戦していく。

歌を歌うだけで幸せ。
歌をうたうことで人生が変わる。

「歌」=「自分の好きなこと」
に置き換えると、普遍的なテーマが見えてくるのです。

もっと、自分の好きなことをやっていこうよ!
そこで、自分の個性や、自分らしさを発揮していこうよ!
それだけで、人生は楽しくなる!!

そんな、チョーポジティブなテーマが、
感動的な楽曲とともに描かれている。

見るとハッピーになる映画。
見ていると勇気が湧いてくる映画。

『SING/シング』。
いい映画です。

■第8位 『ザ・コンサルタント』

これは、想定外にいい映画でした。

予告編を見ると普通のアクション映画を予想しますが、
もと「発達障害」の主人公は、天才的に数字に強い。

その長所を活かして、
「会計士」(コンサルタント)をしている、という設定。

幼少期の発達障害の症状がひどかった頃の描写は壮絶。

つまり本作は、メンタル疾患をディープに描いた作品なのですが、
数字の隠蔽を発見したり、アクションシーンなど
「娯楽面」も良くできています。

心理描写と娯楽描写が、両方共よくできて、
バランスの良い作品になっています。

そして、
意外性があり、それでいて心暖まるラストシーンは、
グッときます。

「おもしろい娯楽映画」とは、こういう映画を言うのです。

■第9位 『沈黙/サイレンス』

深ーーーい映画です。
「骨太な映画」とは、こういう映画を言うのです。

結局、この映画について、映画批評を書き始めたものの、
うまくまとまらず、いまだに公開できないでいる。

「正しい神の教えを伝える」と信じてやまない宣教師。
そして、「キリスト教は日本人にはなじまない」と
し烈なバテレン狩りをする奉行。

最初は、奉行が悪役で、宣教師が正義かと思いますが、
話がすすむにつれて、日本という文化、風土の中で、
キリスト教という異物を持ち込むことの違和感が
鮮烈に浮き上がってきます。

結局、最後には奉行の言葉の方が正しく、
「キリスト教の教え=絶対的な真理」を強要する宣教師は、
精神的独裁者、精神的侵略者にも見えてくるのです。

おそらく見る人によっては、「宣教師」の言い分に
共感する人もいるでしょう。

また、劇中の宣教師の心が揺らぐように、
観客の心も揺れ動くのです。

私は、
「信教、宗教に真理というものなどない」という
テーマを読み取りますが、
これは「キリスト教を否定する」ことに通じるので、
原作者、遠藤周作やこの映画の監督、マーティン・スコセットの
考えとは違うかもしれません。

見る人の数だけ解釈が生まれる映画。
そして、魂を揺さぶる映画。

この映画で魂を揺さぶられないとしたら、
それはかなりの「鈍感」といわざるをえないでしょう。

あまりにヘビーなテーマに、
見終わった後に、「どんよりとした気分」にさせられますが、
それは、ここまで骨太なテーマの映画が
そうないことの証明でもあるでしょう。


■第10位 『ザ・ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』

第10位は、かなり迷いました。
第11位との差は、僅差です。

自分が楽しんだ映画で選ぶなら、
多重人格を描いた『スプリット』を選びたい。。

日本映画で、ブラック企業と心の問題を見事に描いた
『ちょっと今から仕事やめてくる』も捨てがたいものがあります。

猫との交流を通して、
薬物依存症から回復を描いた
『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』もいい映画です。

そんな中、
多くの人に見て欲しいという基準で選ぼう、
ということで最終的に、
『ザ・ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』
決めました。

これはハンバーガー・チェーンの
「マクドナルド」の創業者の物語。

ビジネスチャンスはどこにあるのか?
決してあきらめない姿勢。
ビジネスを貫くときに、人を傷つけることがあるかもしれない。

そんな、「ビジネス」についての、
様々な気付きが得られる作品。

自分で会社を起こして起業したい、
と考える人であれば、多くの気付きを得られるはずです。

FacebookやAppleの創業話もそうでしたが、
会社を起こして、それを広げていくうえで、
様々なトラブルが生じるのは必然です。

そうしたことも含めた「ビジネスの勉強」の教材として、
非常に興味深い作品。

 

■まとめ

というこことで、ベストテンを選んでみましたが、
非常にレベルの高い10本を選ぶことができてよかったと思います。

映画は、多くの「気付き」と「学び」を与えてくれます。

また、メンタル疾患を描いた作品も多く、
病気の理解に役立つ作品も多い。

やっぱり、映画って、素晴らしいですね。

2018年は、映画を100本見ます。
当然、アウトプットもしていきます。

 

映画評は、「樺沢紫苑 公式メルマガ」で
一番最初に発表しますので、お楽しみに。

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