書評/映画評

樺沢流!機内映画の楽しみ方

飛行機の楽しみというと、「機内食」と「映画」くらいなもの。

 

映画ファンの私にとって、
「映画」というのは、かなりの楽しみです。

 

私が映画を機内で選ぶ基準は2つあります。

 

1つ目の基準は、

見たいと思っていたが、劇場で見逃してしまった映画。

 

私は、基本「映画は映画館で見る」というスタンスなので、
見逃したからといってDVDをレンタルしたり、
ネット動画で見ることは滅多にありません。

 

見逃した旧作を見る時間があるのなら、新作を劇場で見たいと
思うのです。

 

しかしながら、機内で見る映画は、劇場以外で見る例外としているので、
機内映画は、見逃した映画をフォローする絶好のチャンスなのです。

 

2つ目の基準は、日本公開予定のない映画。
これは、日本で現時点で日本公開予定がない作品ですが、
こうした作品は、その後も公開決定されることは珍しい。

 

つまり、日本では公開されない映画ということ。

DVD化されないものもあるので、
これを逃すと一生見られないという可能性もあります。

 

「日本公開予定のない映画」には、意外と掘り出し物、傑作が多い
という特徴もあります。

 

あと、機内でどの映画を見るか決める場合、
自分の知らない映画の場合は、必ず「予告編」を見ることにしています。

 

機内映画の場合は、最初だけ見て途中で止める(やめる)という
裏技もありますが、序盤がつまらなくても後半が俄然おもしろい映画も
あるので、できれば「予告編」で、自分の直感を信じた方が
いい映画を選ぶことができるのです。

 

最初の1本目の映画をセレクトするときは、
4本くらい予告編を立て続けに見て、見る映画を決めたりします。

 

ということで、今回、行きの飛行機で見た映画は、以下の3本。

『The Motive』(スペイン映画、日本公開予定なし)
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』
『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』
です。

 

帰りの便でも3本見る予定なので、アウトプットしないと、
内容を忘れてしまう。

 

ということで、早速、アウトプットしてみたいと思います。

 

一番最初に見る映画は結構重要。

飛行機に乗った序盤は、集中力が高いので、
政治物とか、ディープな心理劇が向いています。

 

お気楽な娯楽物は、最後の方か、
帰りの飛行機でいいだろう、と。

 

そこで私が一本目に選んだのは、
『The Motive』という作品。

 

全く予備情報なしの聞いたこともない作品。

 

選んだ理由は、

#日本公開予定がなかったこと。
#あらすじがおもしろそうだった。
#スペイン映画だから(これからスペイン行くので)

 

作家志望のさえない男。
作品を書けなくて悩んでいる彼が、
傑作を書くために行った「あること」とは?

 

小説を書く、作家志望の男の話、ということで
作家の私としてはますます興味真摯。

 

小説教室のシーンなども出てきておもしろい。

 

「あること」とその顛末も、ある程度は予想はつきますが、
興味深いのは、全くパッとしなかった無気力な男が、
小説を書き始めることで、目が輝きはじめ、
「生きがい」「行きている実感」を感じ始めるシーンです。

 

「あること」というのは、モラル的にやや問題が
ある行為でありますが、そんなことはおかまいなしに、
創作の魔力に取り憑かれていく、というのがおもしろい。

 

事故現場の衝撃映像を取り続けるカメラマンを描いた
『ナイトクローラー』にもにています。

 

そう、仕事に夢中になるあまり、
ダークサイドに飲み込まれていくのです。

 

「書く」という行為は、人は没入させる。

 

ある意味、おそろしさもあって、
そんな人間心理が描かれているのは、
なかなかおもしろかったです。

 

『The Motive』
星評価は、★★★☆

 

2本目の映画は、
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』

 

ゲーリー・オールドマンがアカデミー主演男優賞を受賞した作品。

 

現在、日本でも公開中ですが、
見に行こう、見に行こうと思っていながら、
公開劇場が限られていて、まだ見ていなかった。

 

多分、旅行から帰ってくると上映終了している感じなので、
機内で見られてよかったです。

 

チャーチルの首相就任から、
ダンケルクの戦いまでのごく短期間を描いているわけですが、
ナチスによるフランス陥落直前の緊迫した状況を
実にスリリングに描いています。

 

イギリス国内で、この時期、
ナチスと徹底交戦するよりも、和平締結派が主流であったこと
チャーチルは、主流派ではなく、むしろ変人として見られていたこと
など、知らない事実かたくさん描かれていて興味深かったです。

 

この作品の後に映画『ダンケルク』を見ると、
『ダンケルク』がより深く見られると思います。

 

チャーチルがかなりの奇人、変人として描かれているのも、
興味深い。

 

何か大きなことをなしとげるのは、
「凡人」にはできないのだ、と。

 

ゲーリー・オールドマンの、チャーチルになりきりの演技も素晴らしい。
アカデミー主演男優賞、納得です。

 

星評価は、★★★★☆

 

そして、3本目は、
『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』

 

これは、見逃した作品でもなく、
「日本公開予定のない作品」でもありません。

 

今後、公開予定の作品ですが、
どうしても見たい衝動にとらわれて、見てしまいました。

 

結論・・・よかった。

すげーーよかった。

これぞ、アメリカ映画!!

 

私が考える「これぞ、アメリカ映画!!」というのは、
アメリカの「良さ」も「悪さ」もひっくるめて、
生々しいアメリカを描き出した作品のこと。
最近でいうと、『スリービルボード』が相当します。

 

女子フィギュアスケート選手のトーニャ・ハーディングの
人生を描き出しながら、
オリンピック出場を巡って争ったナンシー・キャリガンの襲撃事件の
真相を明らかにしていく、という。

 

ドキュメンタリー風の作りをしながら、
作品にドンドン引き込まれていく。

 

トップ選手に上り詰めても、ウェートレスをして生計を稼いだり、
夫からの日常的な暴力など、
アメリカン・ドリームを目指す過程での、「影」の描写が凄まじい。

 

人間、誰にでも「光」と「影」の部分があり、
それはアメリカ社会の「光」と「影」にも重なっていきます。

 

ドキュメンタリー風の映画といえばつまらなそうですが、
随所に笑いも入れながら、回想シーンを盛り込んだりと、
かなり凝った映画の作りになっています。

 

一番すごいのは、主演のマーゴット・ロビーのフィギュアの演技の再現シーン。
本物のトーニャ・ハーディングの演技を完コピした映像、
一体どうやって撮っているんだろうということも含めて、
凄い完成度です。

 

ということで、ヒューマンな社会派映画とでも言うべき本作。
かなりの掘り出し物に出会えた感があります。

 

星評価は、★★★★☆
と、かなりの高評価です、


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