書評/映画評

「孤独を克服するがん治療」〜正しい情報は人を安心させる

人は、病気になったとき、猛烈に不安になります。

「自分の病気は治るのか?」
「今の治療でいいのだろうか?」
「今のドクターでいいのだろうか?」

不安な状態がつづくと、
「うつ」にもなりますし、免疫力も下がります。
心配すればするほど、病気は悪化するのです。

そうした病気の不安を取り除くにはどうすればいいのか?

正しい情報、知識です。
 
あやふやな情報、知識は人を不安に陥れます。
しかし、正しい情報、知識は、人を安心させるのです。

しかし、患者さんは、医学情報にアクセスしても、
どの情報が正しくて、どの情報が間違っているのか
を判断することができません。

ですから、主治医の治療方針と、
書店に書かれている本が、少しでも違っていると、
ものすごく不安になるのです。

では、どうすればいいのか?

正しい情報を、十分な知識、経験にもとづき、
それをきちんと整理して伝え得ているドクターを信用する
しかないのではないでしょうか。

情報を信用するのではなく、人間を信用する。
ということですね。

これは医学情報に限らず、
インターネットの情報にアクセスするときも同じです。

1個、1個の情報が正しいかどうか判断するには、
膨大な時間がかかりますから、
常に正しい情報を発信している人を信頼するしかないのです。

私も、精神科医として、正しい精神医学の知識、
メンタル疾患の知識をお伝えできるよう、
日夜、勉強し、YouTube動画を作成し続けているのも、

「信頼できる情報発信者」と認識いていただき、
ストレスや悩みを抱えている人や
メンタル疾患の患者さんのお役に立ちたいからです。

さて、話は変わりますが、
最近、私のセミナーや動画撮影会に、
わざわざ宮崎県から足を運んでくれるドクターがいます。
 
腫瘍内科の、押川勝太郎先生です。

その押川先生が書いた本が、
この「孤独を克服するがん治療」です。

がん患者さんやその家族がいだく
代表的な39の質問、悩みに対して、
簡潔な答えが明記されています。

さらに、もっと詳しく知りたい人のために、
その悩みの解決に最適な本が一冊、紹介されています。

つまり、がんの治療や療養に役立つ、
ブックガイド的にも使える本になっています。

がんの世界では、情報が錯綜しています。

化学療法はいいのか、悪いのか。
というのが、代表的なものです。

そうした、錯綜する情報をわかりやすく整理され、
患者さんや家族の頭の中も整理し、
「不安」を取り除き、
「安心」を与える本になっています。

私がアンダーラインを引いたところをいくつか引用してみると

#余命宣告の7割は外れる
#問題の解決によい影響を与えるのは「時間」です
#「死ぬかもしれない」と考える根拠を書き出してみよう
#生きていること自体が奇跡
#主治医だけがその患者さんの正確ながん情報を持っている
#自分と同じ境遇の人と話し合う
#結局のところ、がん患者さんを救うのは「希望」
 
などなど、たくさんの共感ポイントがありました。

がん治療についての「スタンダードな知識」が、
わかりやすくまとめられていて読みやすい本です。

また、押川先生は、
がん共同勉強会やがん患者会などを立ち上げ
積極的に患者さんと向き合う医療をされています。

そんな患者さんとともに治療していく、
というスタンスがこの本の随所ににじんでいて、
温かい気持ちにさせてくれるのもいいですね。

がんを宣告され、不安と恐怖につつまれている人に、
読んで欲しい一冊です。

そうした人に、プレゼントするのもいいと思います。

「孤独を克服するがん治療 患者と家族のための心の処方箋」
(押川勝太郎著、サンライズパブリッシュング)
https://amzn.to/2jfEFn8