書評/映画評

映画 友罪  ~罪悪感とは何か? 罪悪感は越えられるのか?

ううーー。

見ていて、ものすごく苦しくなりました。

 

映画『友罪』。

 

これは、悪い意味ではありません。
私にしてみると、ものすごい賛辞です。

 

人間のダークな部分を見事に描き出した!
だから、見ていてつらくなるのです。

 

中途半端な心理描写ではない。
人間の本質的な、根源的な部分を刺激する。

 

そう!
間違いなく、魂が揺さぶられます。

 

精神科医として見逃してはいけない映画である、
とも言えます。見られてよかった。

 

取り返しのつかない過ちを犯してしまった人間は、
どうやって生きていけばいいのか?
過去の過ち、後悔、トラウマをどうやって越えていけばいいのか?

 

とにかく、いろいろなことを考えさせられます。

 

「心を許した友は、あの少年Aだった」
というキャッチコピー。

 

衝撃的ではありますが、
私の場合、このキャッチから想像、予想した内容よりも、
4倍はおもしろかったと言えます。

 

この映画には、深い心の傷を追った人物が4人以上登場します。
登場シーンの短い人も含めると、7~8人くらいの心の傷を追った人が
登場します。

 

つまり、主人公が何人もいる群像劇のようなイメージ。

 

「少年A」は、そのうちの一人にしかすぎない。

 

この心の傷を持った、複数の人物たち。
全く無関係な人物として登場しますが、
やがて複雑に、そしてディープにからんでいく。

 

そして、それは互いの「癒やし」につながるのか。
それとも、「破綻」なのか。

 

共感、共有、言語化、支え、友情。
といったものが「救い」の鍵になるわけですが、
映画の中でそれらが見事にすれ違っていくのがものすごく悲しく、
また予定調和ではないリアリティを感じるのです。

 

時に見ていて、副作用のような、
拒絶反応に襲われるので、楽しい映画ではありません。

 

親友に自殺されたという人物が登場します。
友人や知人の自殺を経験している人は、少なくないはず。
そんな自分の体験が、否応なし思い出され、心が苦しくなる。

 

私も精神科医を長年やっていますので、
自分の患者さんが自殺する、という経験が何度かあります。

 

その「自殺」に対して、自分は、何とか防げなかったのか。
自分は、やれるべきことを全てやった、といえるのか。

 

劇中の主人公の心理とも重なり、
非常に心が痛い。

 

自殺というのは、本当に「どうしようもない」
シュチュエーションで起きるので、
周囲の人の努力で防げない場合も多いのですが、
それでも「自責の念」から逃れることはできません。

 

誰もが持つ「心の闇」。
この映画は、その「心の闇」と向かい合う作業を要求してくる。

 

だから見ていてつらい。
そして、映画が終わった後も、
とにかくいろいろと考えさせられる。

 

そして、魂が揺さぶられる。

 

心理描写が深い映画が好きな方に、強くおすすめしたい作品。

『友罪』。

 

見応え十分。

 

瑛太の演技が凄い。
瑛太史上、最高だと思います。

 

樺沢の評価  ★★★★☆ 4・5点(★5つが満点)

 

追伸

『アベンジャーズ』のようなお気楽な娯楽映画が好きな方は、
まあ、見ないほうがいいでしょう。

 
 
 

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