書評/映画評

「病気になる理由」と「長生きする理由」がスッキリとわかる本 ~ 『テロメア・エフェクト』

「健康」に関連した本はたくさんありますが、
ほぼ結論は同じです。

睡眠、運動、食事、つながり(交流)、マインドフルネス(瞑想)が重要。

ただ、「根拠」「学術的引用」が違います。
全く異なるアプローチで登っても、
同じ頂上にたどりつくのです。

ノーベル医学生理学賞受賞者
エリザベス・ブラックバーン博士の
『テロメア・エフェクト』を読んで、やはりそう思いました。

テロメアが短くなると、寿命が短くなる。
テロメアが長くなると、病気にかかりづらく、長生きできる。

では、テロメアを長くする方法とは?

具体的に、以下のような方法が書かれています。

# 7時間以上の睡眠が必須
# 寝る前のリラクゼーションが重要
# 朝日を浴びて体内時計をリセットする
# 朝、明るい気持ちで目覚める
# 適度な運動(週2時間)
# 有酸素運動とインターバルトレーニングが効果的
# 過剰な運動は、マイナス
# 朝起きたらポジティブなことを考える
# 寝る前に、一日を振り返り、感謝する
# パートナーや友人との交流が大切
# 今にフォーカスして生きる
# マルチタスクはNG、一つのタスクに集中する

これらは、
私の『神・時間術』に書かれていることと全く同じです。

あまりにも同じすぎて驚くほどです。

『神・時間術』では、
「脳のパフォーマンスを高めるコンディショニング」
について書きましたが、
それがほぼ全て、テロメアを伸ばす。

健康的に長生きする方法そのものであったことが、
この『テロメア・エフェクト』を読んでわかりました。

本書読んで「へー」と思ったのは

# 体重の多い少ないは、テロメアと無関係
# むしろ「腹部脂肪」(ぽっこりお腹)との関係は強く、
  痩せていても腹部脂肪が多い人はテロメアが短い
# ダイエット(カロリー制限)は、テロメアと無関係
# ただし、何を食べたのか? 食事の内容は重要
 
これらも、既存の本にも書かれてはいますが、
テロメアという遺伝子のレベルでの異常として検出されているのは、
非常に興味深いと思いました。

私の専門でハッと思ったのは、
「高齢者ほど睡眠不足が、テロメアの短さに反映される!」
ということ。

若い人は、睡眠不足の影響はすぐに出ないわけですが、
高齢者、特に70歳以上の人は、
睡眠不足の影響がテロメアに顕著に現れる。

高齢者ほど、きちんと睡眠をとらない、ということが
データとして出ていたこと。

あるいは、テロメアの短い人は、海馬の容積が小さく、
認知症、アルツハイマー病になりやすい、ということ。

テロメアが短いことが、
多くの病気の発症の大きなリスクとなってしまうのです。
 
「病気になる理由」は、テロメアが短いから。
「長生きする理由」は、長いから。
 
そして、非常に大きな希望は、
今、「テロメアが短い」人も、適切な生活習慣をすれば、
修復されてテロメアが長くなるということです。
 
そのために必要なのは、

# 7時間以上の睡眠が必須
# 適度な運動(週2時間)
# 食事 (地中海型、オメガ3など)
# 人とのつながり

などの、健康によい生活習慣、ということになります。

私たちが、どんな生活をすれば病気になり、
どんな生活をすれば長生きできるかは、
かなりのところまで科学的に解明されているのです。

あとは、それを私たちが実行するか、どうか。
その一点にかかっています。

『神・時間術』を読んだ人が、『テロメア・エフェクト』読むと、
「なんだ、同じことが書かれているじゃないか」
と思うでしょうが、

それらは知識と知っているだけでは全く意味がなく、
実行されてはじめて、「病気にならない」「長生きができる」。

さらに「脳のパフォーマンスがアップ」して、
「バリバリ仕事がはかどる」という凄い結果が出る。

ということで、
睡眠、運動、食事など、出来ることから実行して欲しいのです。

『テロメア・エフェクト』は、
「テロメア」の発見者であり、ノーベル医学生理学賞を受賞した本人が、
自分の研究領域について、一般向けにわかりやすく解説した本ですが、
ノーベル賞受賞者が一般向けに、さらに網羅的な一冊を書く
というのは、珍しいことだと思います。

さらに、
わかりやすく、読みやすい一冊になっていることは、
もっとレアです。

健康で長生きしたい。
その方法と科学的理由を知りたい人は、
読んで損のない一冊だと思います。

科学的な正確さ。膨大な学術論文の引用。
それでいて、一般人にも読みやすく、わかりやすい文体と翻訳。

間違いなく「ホームラン本」です!

『細胞から若返る! テロメア・エフェクト 健康長寿のための最強プログラム』
(エリザベス・ブラックバーン、エリッサ・エペル著、NHK出版)
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