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多重人格は存在しない!!

昨日見た、
M・ナイト・シャマラン監督の『スプリット』という映画が
おもしろかった!!

実は、アメリカ行きの飛行機の中で、
最初の数分だけ見たのですが、
あまりにもおもしろそうだったので、
やっぱり「劇場で見よう」ということで、我慢しました。

結果、大正解です。

多重人格者に誘拐、監禁された、3人の女子高校生。
果たして、彼女たちは、無事脱出できるのか?

限られた空間内で物語が展開する
いわゆる「ソリッドシチュエーション」もの。

ストーリーは単純ながらも「心理描写」が凄い。

この設定で、エロもグロもなく、
ひたすら犯人と女子高生との駆け引き、心理戦が続きます。

「多重人格」の裏、別人格に働きかけて突破口を見出そうとする。
非常に見応えがある心理ドラマです。

シャマラン映画ならではの突飛な展開はありますが(笑)、
多重人格(解離性同一性障害)についての描写が
思った以上に深く、しっかりとしていて、
心理学的にも語るべき点の多い映画です。

ということで、今回は、
多重人格(解離性同一性障害)について
本格的に語ってみようと思います。

多重人格というのは、精神医学的な診断名としては、
「解離性同一性障害」といいます。

しかし、「解離性同一性障害」といわれても、
なんだかよくわからない。

病気のイメージがわかないので、
私は「多重人格」という俗語の方が好きです。

ということで、「多重人格」という言葉を中心に
以下、書かせていただきます。

1992年頃、
『24人のビリー・ミリガン』という本が大ベストセラーになり、
「多重人格」がブームとなりました。

多重人格を題材にした本がたくさん出版され、
多重人格を題材にした映画がたくさん作られました。
テレビの特集番組でも、「多重人格」が、かなり取り上げられました。

その結果、多重人格の患者さんもたくさん増えました。

それまでは、
精神医学的には、ジギルとハイドのような、
入れ替わり型の典型的な「解離性同一性障害」は極めて稀、
とされていましたが、、

当時は世界でも、日本でも
多くの「解離性同一性障害」症例が報告されました。

そういえば、最近「多重人格」って聞かないですけど、
どうなったのでしょう?

結論。
 
流行らなくなりました(笑)。
 

以下、「多重人格(解離性同一性障害)」についての個人的見解となります。

この見解を支持する精神科医もいますし、
これと類似の説を本に書いているドクターもいますが、
学会レベルでは、認められている説とは言えませんのであしからず。

「多重人格」とは、何だったのでしょうか?

はい、わかりやすく言えば、ファッションです!!

流行らなくなったので、最近はすっかり減ってしまいました。

私の「多重人格」についての考えは、
「多重人格」は流行病という説です。

精神医学の世界で流行病、病気のトレンドの波は、
いくつもあります。
 
古くは、「悪魔憑き」です。
エクソシストの世界ですね。

日本でも、「狐憑き」とか「憑き物」というのがありました。

私が精神科医になったばかりの、1990年頃は、
まだ「憑依」の患者さんは、よくいました。
 
私も何人も担当しています。

しかし、
今では、全くいなくなってしまいました。

どこに行ったのでしょう?

最近の流行病としては、
「発達障害」「アスペルガー症候群」というのがありました。
 
これも、テレビで取り上げられて一気に増えましたが、
最大、患者数が20倍以上に増えたともいいますが、
最近は、時々はいますが、かなり少なくなりました。

私の診察する範囲では、
ほとんどが「発達障害」的、「アスペルガー」的なだけで、
中核といわれる典型的な症例は、ほとんど診たことはありません。
 
つまり、自称「アスペルガー」です。

さらに、数年前には「新型うつ病」というのがありました。

その当時は、今後、「新型うつ病」がドンドンと増えていき
一体、どうなってしまうんだ? と懸念されていましたが、
最近は、さっぱり聞きません。

「新型うつ病」は、病気じゃなくて「甘え」という考えが広がるにつれて、
一気に減ったのです。

「病気」なので、助けてほしい。
だから、私は「病気」かもしれないので診てください。」

それが、「ただの甘え」「未熟なだけ」「甘えてんじゃねーよ」
というのが、コンセンサスになるにつれて、患者数が激減したのです。

不思議ですね。

というか、全く不思議ではありません。

精神疾患といのうは、完全に「流行」であり、
「ファッション」なのです。

今年は、ワンビースが流行ります。
とマスコミが煽れば、ワンピースを着る人が増えます。

今年は、ミニスカートが流行ります。
とマスコミが煽れば、ミニスカートをはく人が増えます。

それと似たようなものです。

病気というのは、「服」というか、「鎧」のようなものです。

強烈にトラウマを経験したり、
「いじめ」や「DV」を経験したり、
不遇な幼少時代をおくっていたり、
父親や母親との関係がうまくいってなかったり、

様々な理由で、心が折れそうになっている人はたくさんいます。

これは、想像以上にたくさんいます。
おそらく、軽症なものも含めると、50%を超えるでしょう。

思い出したくない幼少期の体験、記憶。
ふがいない、情けない、どうしようもない自分。
逃げ出したいような厳しい現実。
 
そんな「現実」に、ガチで直面すると、
私たちの心は切り裂かれます。

発狂し、廃人になるかもしれません。

あるいは、生きている希望を失い、
自殺せずには、いられなくなるでしょう。

そこで、心には「鎧」が必要なのです。

「鎧」のバターンとして、
「うつ」(行動停止)であったり、
「強迫性障害」(バリアの構築)であったり、
「幻覚妄想」「統合失調症」(現実逃避)であったり、
いくつかのパターンがあります。

こうした典型的な精神疾患というのは、
わかりやすくいえば、
「流行に左右されないファッション」とでもいいましょうか。

ジーンズやTシャツ。
ワイシャツ、ネクタイにスーツのようなものです。

どんな精神症状を出しやすいのかは、
遺伝的な要素、環境的な要素が複雑にからみます。

それとは別に、「流行のファッション」というのがあります。

精神医学でいうと、
「躁うつ病」とか「統合失調症」とかいう、
超典型的な疾患群と「正常」な人たちの間には、
幅広く「ちょっと病気っぽい人たち」が存在します。

こうした人たちは、精神的な不調を持ちながらも、
精神症状の表出パターンは、揺れ動くのです。
 
テレビや映画で仕入れた情報に左右されるのです。

「発達障害」という病気がテレビでやっていた。
自分にも、随分と当てはまるところが多い。

「自分は発達障害だ!」と思い込むと、
さらに発達障害の症状に自分自身が注目し、
症状を次々と発見し、ドンドン症状が現れ、
大きく、明確になっていきます。

「発達障害かもしれません」
「新型うつ病かもしれません」

と言って病院を訪れる患者さんが、
「病気を演じている」わけではありません。
 
その点は、誤解なきようお願いします。
 
雑誌で「情報弱者」の特集を読むと、
「自分は、こんな情報弱者の特徴に当てはまっている」と感じて
「やっぱり、自分も情報弱者だ」と確信する。

そんな心理も同じです。

あくまでも、
無意識レベルの反応です。

そう思い込んでしまうのです。

無意識に情報が擦れこまれ、その情報に洗脳され、
情報に影響され、情報にマッチした「症状」が現れるのです。

例えば、キリスト教信仰のないところで「悪魔憑き」はおきないし、
狐が生息しない地域では、「狐憑き」は起きないのです。

そして、「多重人格」というのも、
まさに「流行精神疾患」の典型とも言うべきものです。

日本において、解離性同一性障害をたった一人のドクターが、
稀にしか発生しない多重人格を、多数、症例報告しています。

町沢静夫氏です。

昔、彼を密着取材した、解離性同一性障害患者を治療する
ドキュメンタリー番組をやっていて
見ていて驚きました。

解離性同一性障害患者の、人格一つ一つと向き合って、
じっくりと話を聞いていくのです。

患者さんの話をじっくりと聞く。
一見、良さそうですが、逆効果です。

結果どうなるのかというと、
それぞれの人格が心理的に「承認」されるわけです。

多重人格の交代人格が、ドンドン出てくるのです。

これ、精神科医としてやっちゃけいないことだと思います。

病気を治すどころか、余計に病気をひどくしている。
交代人格を「召喚」しているようなものです。

町沢氏は、「日本で一番多重人格者の治療をしている」と
誇らしげに語っていますが、
私からすると「日本で一番、多重人格を作り出した医師」
ということになります。

患者さんは、自分と向き合って、じっくり話を聞いてくれるのが、
うれしくてしょうがないのです。
 
普通の「うつ病」だと、10分の診療が、
多重人格だと、1時間も話を聞いてくれるのですから。

繰り返しますが、患者さんが、
多重人格を演じているわけではないのです。

あくまでも「無意識」レベルでの話。
「無意識」レベルでの防衛反応の一つが「解離」です。
 
「解離」とは、自分の体験した出来事の記憶や考え、
感情、行動などの一部を脳が自分の意識から
勝手に切り離してしまう現象です。

虐待にあった子供が、虐待された事実を
全く記憶していない。

これなんか、「解離」の典型例です。

「解離」という、「殻」「カプセル」に逃げ込むのです。
避難するのです。

「解離」というのは、非常にありふれた防衛反応なのですが、

その複雑なバージョンが「解離性同一障害」で、
別人格と本来の人格を行き来する。

「別人格」に解離、避難することで、
精神的ストレスの緩和をはかるわけです。

「解離性同一障害」というのは、
症例としては間違いなく存在します。

でもそれを作り上げるのは、
マスコミなどに流布される社会的情報であり、
それを余計に引き出して、悪化させてしまう、
精神科医やカウンセラーがいます。

私から見ると、「多重人格」というのは、作られた病気です。

「多重人格」についての予備知識がゼロの人が、
「多重人格」になる確率は、極めて少ないのです。
ゼロとはいいません。

狐を見たことがない人が、
「狐憑き」にならないのと同じです。

「樺チャンネル」の相談なんかでも、

「多重人格って本当にいるのですか?
 誰でも多重人格的な部分というのはあるのだと思います」

というのが、時々あります。

「多重人格的な部分は誰にでもある」という点が
とても重要です。

表と裏の顔を見事に使い分ける日本人は、
ほとんどが「多重人格的」です(笑)。

これは、人間の持つ一つの「特性」です。
よくある「特性」なのです。

「誰でもうつ的な部分ってあるよね」というのと同じ。

その「特性」が、トラウマやストレスで
暴走してしまうのが、精神疾患なのです。

「多重人格は、存在しない!!」

そうした症状を示す患者さんは存在するのですが、
あくまでも作り上げられた病気ということで、
自然発生的に、中核的な病気群としては、
「存在しない」というのが、
私の多重人格についての見解です。

精神疾患は、「病気」とされますが、
私は「病気」ではなく、
「正常な心理防衛反応」だと思っています。

ある意味、「緊急停止装置」なのです。

これ以上、放置すると、心も身体もボロボロになり、
生きていけない状態になる。
生きていく希望を失って「自殺」してしまう。

それを防ぐための「緊急停止装置」が、精神疾患です。

ですから、
「緊急停止装置」が発動する前に、何とするべきなのです。

それが、「予防」であり、心と身体を整える「コンディショニング」
ということで、私が「樺チャンネル」にて動画で、
精神医学、心についての話題を発信している理由でもあるのです。

ということで、25年間。
心に秘めていた、私の「多重人格」論を、
はじめて公開してみましたが、いかがでしたか?

賛否両論、あるかもしれませんが。
精神科医歴25年の経験からの結論です。

追伸

樺チャンネル、関連動画
『人前で別の自分を演じてしまいます』(2分33秒)