書評/映画評

わたしに会うまでの1600キロ

「おもしろい映画は、少ない」と思う人は多いでしょうが、
決してそんなことはありません。

おもしろい映画は、結構あります。

ただ、その作品が日本で公開されるかどうかわからないし、
公開されたとしても、
シネコンで長期に公開されることはありません。

小さな映画館で期間限定で公開され、
「おもしい」と評判がたつ頃には、
たいてい上映が終わっています。

ですから、おもしろい映画はたくさんあっても、
その映画と出会うことは、実は非常に難しいのです。

特に娯楽系ではない、
深い心理を描いたヒューマンドラマは、
シネコンでは公開されないので、
普段から情報を集めておくか、
口コミの網をはっておく必要があります。

そんな、
「いい映画なのにほとんどの人に見逃される映画」
の代表例みたいな作品が、
『わたしに会うまでの1600キロ』です。

東京では渋谷「アップリンクス」のみで公開、
上映時間も限られているので、
「絶対見るぞ!」という熱意がない限り、
見るのが難しい条件がそろっています。

実は、この映画。
先日、アメリカ行くときの飛行機の中で見たのです。

数十本の映画の中から
好きな作品を見ることができる
エンタテイメントシステム。

最新の娯楽大作も多い中、
私が一番興味を持ち、最初に見た作品が、
この『わたしに会うまでの1600キロ』だったのです。

私がこの映画が「おもしろそう!」と判断した理由は、
『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』の
リース・ウィザースプーンが主演であること。

そして、私の2013年の私の年間ベスト・ワンである
『ダラス・バイヤーズクラブ』の
ジャン=マルク・ヴァレが監督していることです。

有名女優が地味な映画に出演する場合、
それは「脚本がいいから」という理由みことが
結構あります。

まさに本作は、派手さはないものの、
人間の深い心理と心の病からの回復を描いた
良作になっています。

自然歩道のパシフィック・クレイスト・トレイル。
その1,600キロの距離を3か月かけて1人で歩き通した実在の女性
シェリル・ストレイドのベストセラーの映画化。

1,600キロといえば、日本縦断が3000キロですから、
その半分に相当します。

そして、全て起伏のある山道で、一部は雪に覆われている。
それを食料と水、数10キロの荷物を背負って歩き続ける。

なぜ、そんな困難なことに彼女は挑戦するのか?

1600キロ

彼女の過去が、回想シーンで少しずつ明らかに
なっていくところがおもしろいのです。

彼女の心の病と離婚の理由が、
少しずつ見えてくる。

そして、それが明らかにされたときに、
「なるほど、1,600キロを歩く意味とはそういうことだったのか」
と謎が解け、感動が湧き上がります。

派手さはありませんが、
心理描写、人物描写の積み重ねよって、
最終的に人間の心の闇や心の深部が見えてくる。

こういう映画。
大好きです。

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