書評/映画評

発達障害と言いたがる人たち ~発達障害は病気ではない

「発達障害は病気ではない」。

香山リカさん、よく言った!!

 

発達障害は、
「アスペルガー症候群」(現在は自閉症スペクトラム障害)、
「注意欠陥多動性障害(ADHD)」、「学習障害(LD)」などを
まとめた概念。

 

テレビで「アスペルガー症候群」や「ADHD」が
取り上げられると、
「自分もアスペルガー症候群かも」
「自分もADHDかも」
「自分の子供は、アスペルガー症候群かも」
「自分の子供も、ADHDかも」
といった方が、精神科に殺到します。

 

あるいは、こうした質問が、
私のYouTubeへの質問として、大量に送られてきています。

 

多くの場合は、「発達障害」とはいえない場合がほとんどだし、
治療が必要なケースは、ほんの一部にすぎないのです。

 

あるデータによると、
日本人の10%が発達障害という数字も出ていますが、
そんな馬鹿げたことがあるはずありません。

 

しかし、
“「発達障害」と言いたがる人たち”を含めると、
そのくらいの数字になるかもしれません。

 

“「発達障害」と言いたがる人たち”が、
世の中にはたくさん存在して、
必要のない治療を受け、
必要のない薬を飲むことになっている子供もたくさんいます。

 

「発達障害」をめぐり、いろいろな医療上の問題が発生しています。

 

私もその問題については、
YouTube動画で取り上げてきました。

 

例えば、
『アスペルガー症候群という名の病気はなくなりましたけど・・・』(6分30秒)

 

「発達障害の当てはめゲームはやめよう!」

「発達障害かもで病院受診するのはやめよう!」

といった話を繰り返ししています。

 

発達障害をめぐる、
精神医療の問題について私なりに指摘してきましたが、
この問題は非常に根が深い。そして複雑。

 

操作的診断基準変更の歴史的な背景もあります。
それをきちんと解説しようとすると、
本、まるごと一冊になってしまいます。

 

それを見事にやってのけたのが、
この精神科医・香山リカさんの『「発達障害」と言いたがる人たち』です。

 

「発達障害」をめぐる社会現象を、非常に正確に、
かつ網羅的にクールに視点で解説した一冊です。

 

・拡大する「発達障害ビジネス」
・過剰診断という悩ましい問題
・「診断名を求める患者」と「それに応えようとする精神科医」
・製薬会社がいま”狙う”のが発達障害

 

今まで、一般向けの本としては、ほとんど語られてこなかった、
精神医療の問題点が、
ズバリと、明快に、そしてわかりやすく書かれています。

 

「香山リカさん、よくここまで書いたね」
というのが、私の率直な感想。

 

発達障害が疑われるお子さんを持つ母親のほとんどは、

「自分のしつけが悪かったから」
「自分の愛情不足が原因かもしれない」

と自分を責めて、自責的になります。

 

その辺については、

>発達障害はしつけの問題ではない
>幼児期の愛情不足から発達障害になるわけではない

と明言しています。

 

これは、
発達障害が疑われるお子さんを持つ母親にとって、
非常に大きな救いになるはずです。

 

「発達障害」に対する、不正確、不適切な知識が
ネットやテレビでは、大量に出回っていて、
学校の先生や母親たちもそれらの情報に踊らされて、
不必要な治療や投薬を受け、莫大な医療費が無駄にされている。

 

この本の正しい「発達障害」の知識が広がることで、
そういった「非合理」や「医療費の無駄」がなくなり、
多くの人の救いになるはずです。

 

社会に与える影響、インパクトは、ものすごく大きいと思います。

 

正直、私は香山さんの本はあまり好きではありません(笑)。
精神科医としてのスタンスも、かなり私とは異なります。

 

勝間和代さんとバトルを繰り広げた
『勝間さん、努力で幸せになれますか』(朝日新聞出版)
でも、私は圧倒的に勝間派で、香山さんには1%も共感できませんでした。

 

しかしながら、本書に関しては、正直凄いなあと思います。

 

これは「世の中に何かを問う」本であり、
時代が必要としている本でもあるのです。

 

ネットやテレビに氾濫する「発達障害」に関する
ウソ情報に踊らされるのはもうやめましょう。

 

「自分は大人の発達障害かもしれない。」
「自分の子供は、発達障害かもしれない。」
という人は、絶対に読むべき一冊。

 

間違いなく、ホームラン本です。

 

『「発達障害」と言いたがる人たち』
(香山リカ著、SBクリエイティブ)

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