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バベルの塔を見た!

4月18日にスタートしたばかりの
ブリューゲル「バベルの塔」展(東京都美術館)
を、見てきました。
 
というか、樺沢塾、ウェブ心理塾の仲間、11名と一緒に
鑑賞会を開催して、その後でみんなで感想をシェアしたのでした。

ブリューゲル「バベルの塔」。

知る人ぞ知る。
知らない人は、知らない。

しかし、樺沢紫苑にとっては、非常に重要な作品です。

なぜならば、
樺沢紫苑が一番好きな画家が、
ピーター・ブリューゲルであり、
樺沢紫苑が一番好きな作品が、「バベルの塔」だからです。

ブリューゲルの「バベルの塔」は、2つあります。

一つは、ウィーン美術史美術館に所蔵される「大バベル」。 
もう一つが、オランダのボイマンス美術館所蔵の「小バベル」。

その「小バベル」が、今回、24年ぶりに来日して、公開されている
ということで、こんなチャンスは滅多にない!

ということで、今回、見に行った次第です。

大バベルと小バベル。
babel

「大バベル」は、今から二十年ほど前に、

ウィーンで行って見てきたわけですが、
「小バベル」はまだ見たことがなかったので、
今回、はじめて、生で見ることができる!

ということで、ワクワクしながら、
見に行ってきた、というわけです。

私のベスト絵画は、「大バベル」の方で、
「小バベル」は、あまり好きではありませんでした。

今回、生で「小バベル」を見て、その理由も、
ありありと自覚できました。

「大バベル」と「小バベル」の違い。
それは、大きさの違いがあります。

「大バベル」は、「小バベル」の約4倍の大きさがあります。
今回、「小バベル」を見た最初の印象は、
「小さい!」ということです。

描かれるバベルの塔のスケール感と比べて、
作品そのものの大きさが、ものすごく小さい、
ということです。

自分がイメージしていた大きさよりも、
4分の1くらいの大きさ。

非常にこじんまりとした作品で、
そこに驚かされます。

しかし、「小さい」けども、
細密に書かれたその作品の緻密さに
驚愕させられるのです。

どうやって、こんな細かいものを描いたのだろう?
そのくらい、緻密で細密で、写実的で、現実的。

空想の産物である「バベルの塔」をここまでリアルに描いた
ブリューゲルの創造力と、その画力に驚嘆させられるのです。
 

ブリューゲルは、「大バベル」を描き、
その後、同じテーマで「小バベル」を描きます。

なぜ、同じテーマで2つの作品を残したのでしょう?

「小バベル」を描いて、次に「大バベル」を描いた
というのならわかります。

なぜ、「大バベル」を描いてからの、
「小バベル」なのか?

これが、私の中でも疑問として存在していたわけですが、
その疑問が、実際に作品を目の前にすると、氷解したのです。

「大バベル」と「小バベル」。
そこには、もう一つ大きな違いがあります。

それは、「大バベル」では、人物が描かれているのに対して、
「小バベル」では人物が描かれていないことです。

「大バベル」の左下には、バベルの塔を建設する
王の姿が描かれています。

天まで届くバベルの塔を建設する!
 
そうした野望を抱いた王が描かれている。
 
その野望は、神によって完全にうち砕かれるわけですが、
その前の野心、まんまんの建設途上のバベルの塔が
描かれているのが、「大バベル」なのです。

一方、「小バベル」では人物が描かれていない。

と思っていたのですが、今回の展示を見ると、
その解説に「1,600人の人が描かれている」と
書かれているではありませんか。

この絵のどこに、1,600人も描かれていた?
と思うわけですが、目をよく凝らして見ると、
点のような、数ミリの人間が数多く描かれていることに気付きます。

それに気付いた瞬間、
私は雷に打たれたような衝撃にとらわれました。

「小バベル」が描かれた理由。
そこに、気づきました。

それは





「神」の目線です。

「大バベル」は、野望に満ちた人間の目線で描かれています。

「小バベル」は、野望に満ちた人間たちを、
蟻のように見下ろす神の目線で描かれている。
だから、人間は判別不能なほど小さい。

そして、作品自体も、巨大ではありながら、
「ちっぽけ」で「陰鬱」で「空虚」な雰囲気を強烈に放っている。

「ちょこざいな、人間の技め」という神のつぶやきが聞こえてきそうな、
そんな雰囲気です。

だから、作品の大きさも、「小さい」必要があったわけです。

人間目線の「大バベル」。
神目線の「小バベル」。

この2作品が対になることによって、
聖書の「バベルの塔」のエピソードを、
より深く、強烈、描き出すことに成功しているのです。

(続く)

追伸

この文章を改めて読み直すと、
作品の「感動」が尾を引いているせいか、
かなり「混乱」した文章になっていて、恥ずかしい限りです。

しかし、それは「バベルの塔」の感想としては、
実に適切ともいえるのです。

「バベルの塔」のバベルは、「混乱(バラル)」を語源としているから。

つまり、バベルとは、「混乱」という意味です。

この作品を見て、混乱、当惑させられるのは、
ある意味、必然であるのです!!

「バベルの塔」展 公式サイト
https://babel2017.jp/