映画『閉鎖病棟 ―それぞれの朝―』を見ました。
というか、1週間前の公開直後に見たのですが、
なかなかディープな作品で、感想をどうまとめていいのか、
ずっと考えていたのです。
精神科の「閉鎖病棟」を舞台に、
そこで治療、生活する人たちの姿を描き出した作品。
精神科の「閉鎖病棟」は、
映画では時々見るかもしれませんが、
世の中のほとんどの人は、実際に立ち入ることのない世界。
「禁断の世界」というか、本当のところはどうなっているのか?
知りたい人もいるだろうし、全く関心のない人もいるでしょう。
「閉鎖病棟」は、究極の「非日常空間」、
あるいは「異世界」と言ってもいいかもしれません。
しかし、精神科医にとって、「閉鎖病棟」は日常です。
毎日、病棟回診するわけで、
一日の中のかなりの時間を病棟ですごす、精神科医も多いはず。
そんな精神科医の目で、
この映画で描かれる「閉鎖病棟」を見るとどうなるのか?
- 暴力的でしょっちゅうトラブルを起こす患者さん。
- ヘッドギアをつけた患者さん。
- なぜか、メルヘンチックな服を好む患者さん。
- ブツブツと独り言をずっと言っている患者さん。
- デイルームでいつも新聞を読んでいる患者さん。
- 外出中に自殺する患者さん。
- 甘いものが大好きな患者さん。
- 面会に来る家族と喧嘩する死患者さん。
- デイケアの定番、カラオケと陶芸。
- 閉鎖病棟といいながら、日中ドアが開いている「半閉鎖病棟」。
などなど、「閉鎖病棟」あるあるのオンパレードです。
山本周五郎賞を受賞した帚木蓬生の
ベストセラー小説「閉鎖病棟」を原作としていますから、
原作に書かれたものを映像化しているのでしょうが、
「閉鎖病棟」の特徴をよくとらえているといえます。
ただし、こうした患者さんが、一時期に全て入院している
ということはないでしょうが(笑)。
「閉鎖病棟」の時間は、非常に「ゆったり」と流れます。
その「ゆったりとした時間」が、この映画では、
非常にうまく表現されていたのは、良かったと思います。
死刑執行に失敗し生きながらえた秀丸(笑福亭鶴瓶)。
幻聴に悩まされる元サラリーマンのチュウさん(綾野剛)。
父親からのDVと自殺未遂で入院した女子高生の由紀(小松菜奈)。
ほのぼのとした人間味ある雰囲気をかもしだす鶴瓶の演技。
幻聴に苦しめられる患者の雰囲気を見事に演じている綾野剛。
そして、寡黙な少女ということでセリフが少ないながらも、
空気感も含めて小松菜奈の演技もすばらしい。
ただ、秀丸があまりにも人間的に「良い人」に見えてしまうため、
彼が安易に殺人を犯した(犯す)、
2つの描写に非常に違和感を持つのです。
小説であれば、読者の想像しだいですが、映像にすると、
リアルなだけに、陳腐にもなりやすい・・・。
そこだけが、ちよっと気になりました。
重苦しい雰囲気の中にも、
「希望」というものが描かれる。
「閉鎖病棟」というのは、精神疾患患者を収容する場所ではなく、
そこに入り、そこから出て行く。
「癒やしの場所」であり「通過する場所」である、ということ。
非常にポジティブに見ているのは、良いですね。
多く患者さんは、「精神科には絶対に入院しない!」と言いますが、
この映画を見ていれば、「まあ一ヶ月くらいなら入院してもいいかな」
と思うかもしれません。
そして、「患者同士が癒やし合う場所」という視点も、
とても良い。
医師や看護師が病気を治す、支えるというのは当たり前ですが、
本作はそれ以上に、「患者同士の癒やし」がテーマとなっているのです。
ということで、非常に難しいテーマを、
時に笑いを交えながら、心にしみるドラマとして描いています。
この映画、誰に勧めていいか、非常に難しいものの、
精神科の「閉鎖病棟」をチラ見したい人。
精神科の医療の現場に興味のある人に、おすすめできる一作。
『閉鎖病棟 ―それぞれの朝―』 樺沢の評価は・・・ ★★★★ (4・0)
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