書評/映画評

『スティーブ・ジョブズ』【映画批評】~狂気と天才の間

映画『スティーブ・ジョブズ』を見ました。

衝撃です!!
ジョブズ・ファンは卒倒するんじゃないかな(笑)。

ジョブズの変人、奇人ぶりは知られたところですが、
この映画では変人を超えて「狂気」に近いところで描かれています。

天才と狂気の紙一重の世界。 

天才というのは、たいていそういうものです。

歴史上の天才で「正常」の人は、ほとんどいない。
「病気」か「病気の一歩手前」くらいの人が多い。

誰も理解されないスティーブ・ジョブズの斬新な発想。
だから誰も真似できないものを作れた、ともいえるのでしょう。

盟友であったはずの、
プログラマーのウォズニアックや
コカ・コーラからCEOとして招いたスカリーとの
確執がすさまじい。

昔は、同じ「夢」をいだいていた同士だったはずが、
疑心暗鬼となり、やがて深い確執が生まれていく。

ウォズニアックやスカリーともう少し上手に付き合えば、
社外に放逐されることもなかったかも・・・
とも思いますが、全く「妥協」をゆるさない男だからこそ、
斬新な発想ができたのだろう・・・と
彼の「狂気」と「クリエイティビティ」とは諸刃の剣
のような関係になっているのでしょう。

ただ「思っていること」と、
それを表現して、相手に伝えるのかは、別次元の話。

「自分の考え」の全てをさらけ出して
相手にぶつれる必要もないわけですが、
ジョブズは平気でそれをやってしまう。

愛する娘にすら・・・。

「父親」としてのジョブズに、
かなり大きなフォーカスを当てて描いているのも興味深い。

「もっと素直になればいいのに」と見てて思うわけですが、
父娘関係の心理劇も見どころです。

これだけの社会的成功を手に入れているというのに、
家族にも、旧友にも見放されていくという孤独さ。

いろいろな側面から、ジョブズの「明」と「暗」が
描かれますが、どちらかという「暗」の方が大きい。

マッキントッシュ、ネクスト、iMacという
たった3回の新製品発表会にのみフォーカスを当てた
ストーリー構成は全く斬新。

その臨場感と緊迫感をセリフと演技を活かしながら
長回し風に取っていくところは、
アカデミー作品賞を受賞した『バードマン』を思い出します。

アカデミー賞といえば、『スラムドッグ$ミリオネア』で
アカデミー賞作品賞&監督賞を受賞した
ダニー・ボイルが監督していますが、
『スラムドッグ$ミリオネア』に通じる臨場感、躍動感に
監督の作風がうまく現れています。

スティーブ・ジョブズという人間は、
どんな人間だったのか?

いくつかの視点から描き出しているわけですが、
いろいろな意味で衝撃的。

ジョブズやマック製品のファンの方は、
かなり引き込まれる映画だと思います。

 

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