書評/映画評

きょうだい児 ~毒親、虐待、イジメ、家族の世話!  どんなに苛酷な環境でも、強く生きられる!

「世の中に必要な本」というものがあります。
 
それを読むことで、心から救われた!
落ち込んだ気持ちが、癒やされた!
勇気を持って、生きられるようになった!
 
そう思ってもらえるような本を、
私は、書いているつもりです。

とはいえ、自分の専門の領域。
自分が書けるジャンルは、限られます。
 
自分の専門外でも、
「世の中に必要な本」は、間違いなくあります。

 
そして、そうした本が日の目を見るチャンス。
著者と編集者をつなげる機会が、
私が主催します「ウェブ心理塾」の
出版企画書コンペです。
 
昨年、2023年7月の出版企画書コンペで、
非常に印象に残った企画があります。
 
それが「きょうだい児」の企画。
 
「きょうだい児」は、
「障害のある兄弟姉妹がいる人」のこと。

 
幼少時から、
♯親の愛情を十分に受けられない
♯ヤングケアラーになりやすい
♯(自分の)努力が認められない

ことが多い。
 
親は、障害のある兄弟の養育に
一杯一杯なので、十分な愛情が得られず、
心に傷を持ったまま、
大人になっているのです。
 
本書『きょうだい児』は、
家出癖、薬物乱用、無理心中未遂の母親。
カルト教団入信、家庭内暴力、モラハラの父親。
そして、重度知的障害、自閉症、強度行障害の弟。
 
両親そろって、究極の毒親に育った
「平岡葵」さんの、
激動の人生を、わかりやすく、
そしてユーモラスな漫画として仕上げた作品。

 
私は、今まで精神科医として
1万人以上の患者さんを診察しています。

精神科の患者さんは、
苛酷な家族環境で育った人が多いです。

しかし、
ここまで苛酷な環境で育った人は、
なかなかいないでしよう。
 
このような地獄のような環境で、
どのように自己を保ちながら、
成長していったのか・・・。

教師にほめられたことを、
心のよりどころにしたり。

ブチ切れて、母親を突き放したり。
イジメっ子に復讐したり・・・。
 
結局、現状から脱出するために、
必死に勉強して、県のトップ高校に入学。
 
「東京に行くなら東大、早慶以外はダメだ!」
という父親の言葉を逆手にとって、
慶応大学に合格! からの、家を脱出。
 
そして、今。
自分の苛酷な経験をふまえ、
きょうだい児が安心して話せる場を作りたい。
 
きょうだい児についても、もっと広く知って欲しい
ということで、本書を出版されました。

普通に体験談としてまとめると、
間違いなく「読んで暗くなる本」になってしまう。
 
そこを、もの凄くユーモラスで明るい本に
仕上げているのは、
編集者の力もあって、
本当に素晴らしい一冊になっています。

本書は、
「きょうだい児」として育った人、は当然として、
毒親に育てられた人。
苛酷な幼少期を経験している人。
「死にたい」と思っている人に、
広く読んでいただきたい。
 
もちろん樺沢の本からも、
トラウマから立ち直るヒントは得られるでしょうが、
本書の「経験談」(事実)の迫力が、すさまじい。
 
「苦しみ」を経験しているからこそ、
今、苦しんでいるあなたは、
「自分だけじゃなかった」という「共感」。

そして、安心感からの
「癒やし」を得るはずです。

『きょうだい児 ドタバタ サバイバル戦記
カルト宗教にハマった毒親と障害を持つ弟に
翻弄された私の40年にわたる闘いの記録』
(平岡葵著、講談社)

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