書評/映画評

アンダーカレント ~魂が揺さぶられた!!

樺沢が最も注目する日本人監督は?
それは、今泉力哉監督です。

『愛がなんだ』『街の上で』『猫は逃げた』『窓辺にて』。
人間関係、男女関係の難しさ、危うさを、
ユーモアを交えながら描いています。

1つ1つの会話が、実にスリリングで、
心の機微が丁寧に、丁寧に積み上げられていきます。

そして、楽しみにしていた今泉監督の新作
『アンダーカレント』を鑑賞しました。

良かったー!! 
魂が揺さぶられました!
最後の数シーン。
堰を切ったように、涙があふれました。

かなえ(真木よう子)は、家業の銭湯を継ぎますが、
夫(永山瑛太)は突然、失踪して、行方不明に・・・。

そこに謎の男、堀(井浦新)が、住み込みで働く事に・・・。

銭湯を営む彼らの日常が、淡々と描かれる。
なんと凡庸な設定。大丈夫か? 
と不安になる序盤の展開。

しかし、平凡で常識人と思われていた彼らの、
「心の闇」「トラウマ」が、徐々に浮き彫りになっていくのです。

平凡で普通であるからこそ、
後半との「落差」「コントラスト」が大きい。
 
人を理解するってどういうこと? 
あなたは、パートナーのことを、どこまで理解できていますか? 
という問いは、ドキッとさせられます。

自分の妻のことを、自分はどれだけ理解しているのだろう?

あるいは、精神科医として、患者さんの気持ちを
どれだけ理解できているのだろう?
考えるほど、心が痛みます。

他人を理解することは難しい。
そもそも自分を理解すること自体、できているとは言い難いのですから。

さらに、「あなたは死にたいと思ったことがありますか?」という問い。
中盤から、自殺のテーマが盛り込まれます。

失踪した夫は自殺したのではないか・・・
という疑念を持ちはじめる「かなえ」。

そして、自身にも、自殺願望があったことを、
反復する夢を通して、意識し始めるのです。

序盤の凡庸な心理描写と、
後半の激しい心の葛藤、感情の揺らぎのギャップがすさまじい。

そして、最後に明らかにされる、意外な事実。

普通の人、平凡な人でも、
実は大きなトラウマを抱えているか・・・もしれない。

そして、それを誰にも気付かれないように、
普通の人を装いながら、何とか生きている。

それは「特別」なことではなく、
誰もがそうじゃないのか・・・と思わせるのは、
前半の「普通に日常」の描写があってこそです。

かなえと堀との、恋愛関係になりそうでならない。
綱渡りのロープを渡るような、
チョー微妙な心理描写も、実にスリリング。

本作では、その重要な行動に、随所に「なぜ」を突きつけられますが、
それを言語化できない・・・というシーンが何度も出てきます。

自分の行動は、必ずしも自分で言語化できるわけではない。
自分の行動を説明することは、容易ではない。
言語化できないのが普通なのです。

しかし私たちは、不可解な行動をとる相手に
「なぜ?」と突き詰めてしまいます。
この問いは、本人にとっては、
とても残酷な「問い」なのかも知れません・・・。

シリアスなテーマを描きながらも、
随所に「ユーモア」と「笑い」が盛り込まれるのが、
今泉作品の特徴でもあります。

本作では、
リリー・フランキー演じる個性的な探偵「ヤマサキ」がお笑い担当。

この「笑い」のおかげで、シリアスな題材なのに、
映画の印象が暗くならないのです。

今泉監督の作品には、エンタメ映画のような「大事件」や
ダイナミックな盛り上がりはない場合が多い。
だからこそ「小さな心理的なゆらぎ」にジワッと来るのです。

「エンタメ映画のようなダイナミックな盛り上がり」は、
私たちの人生とは無縁ですが、
今泉作品の「小さな心理的なゆらぎ」は、
私たちの日常に十分にありえる。
いや、必ずありえる等身大のリアリティがあるのです。
 
誰でも、心に傷を持ちながら生きている。
人を癒やすのは、人。つながりでしかない。

とするならぱ、自分一人で「苦しみ」を抱えるよりも、
誰から支え合いながら、生きた方が楽なのです!

シリアスなエピソードも多い中、
圧倒的にポジティブなラストに勇気付けられる。
魂が揺さぶられました。
良い映画を、見ました。

『アンダーカレント』樺沢の評価は・・・★★★★☆(4・8)
(年間ベスト3水準)

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