書評/映画評

ディア・エヴァン・ハンセン に号泣  ~自殺をテーマにしたミュージカル!?

今年一番の号泣映画! 
『ディア・エヴァン・ハンセン』。

よくこんなミュージカル、そして映画を作ったものだ。
それができるのが、アメリカ。
 
アメリカ高校生の「心の闇」。
そして、急増する自殺の問題を、
ミュージカルという非常に見やすい形で問題提起。
テーマは深刻だが、引きつけるストーリーで圧倒的に引き込まれる。
そして、圧倒的に共感し、泣けるのです。
 
本作を見る前に、米国ティーンエイジャーのメンタル現状を知って欲しいです。
♯10代の自殺は、過去10年で1・5倍に急増。
♯10-14歳の自殺率は、日本人の3・5倍。
♯10代でうつ病と診断された人の割合は、13%。
♯20歳までに発達障害と診断される割合は約10%。

 
アメリカ人の10人に1人は、向精神薬を服用していますが、
ティーンにおいても、10人に1人以上が精神科の治療
(薬物、カウンセリング)を経験するという。
 
米国ティーンエイジャーの精神科受診や向精神薬が
実に当たり前の現状になっている。

また、若者の自殺率が急増し、
それは大きな社会問題になっている、という現実。
この現実を知ると、本作の奥深さが何倍もわかるはずです。
 
映画の冒頭。主人公のエヴァンは、
不安と抑うつが強く、自己肯定感が最低で、向精神薬を服用している。
そして、エヴァンの友人(?)が、いきなり自殺します。

(これは、予告編にも描かれているので、ネタバレではありません)
 
これを見た日本人は、
「何て、突飛な設定だろう」と思うかもしれません。
しかし、メンタルを病んだティーン、そして同じ学校の仲間自殺。
これは、完全に「日常」「よくある風景」にすぎない、
というのが米国の現実なのです。
 
本作は、そんな病めるティーンに、
「もっと話をしよう」「孤独なのは、あなただけではない」
というメッセージを発しています。

 
本作は、トニー賞6部門受賞のブロードウェイ・ミュージカルを
映画化したものです。
ミュージカルというのは、金持ちが見るイメージかもしれませんが、
アメリカでは高校生の観客がとても多いのです。

私がシカゴにいたときも、集団鑑賞というか、
高校生がスクールバス数台で、ミュージカルを見に来ていました。
観客の数割は、ティーンなのです。

だから、「ティーン向けのメッセージは、ミュージカルで発する」
というのは、非常に理にかなっているのです。

 
日本でも自殺、そして遺された人たちの物語と言えば、
村上春樹の傑作『ノルウェイの森』がありますが、
どうしても話が深刻になってしまう。

本作では、テーマは深刻ですが、
それをミュージカル、エンタメというオブラートで
上手にくるんでいるので、深刻にならず、
明るい気持ちで最後まで見られるのは、凄いことです。
 
楽曲も良いし、映画版の俳優たちの歌唱力、表現力が素晴らしい! 
また、英語も非常に聞きとりやすく、
原語でスーッと入ってきました。
 
誰でも孤独なんだ。
誰でも人の目を気にしているんだ。
誰でも、友達一人作るだけで苦労しているんだ。

アメリカ人というと、「自己肯定感が高そう」と思いますが、
そうではない人たちがたくさんいて、
みんな苦しんでいるのです。
 
最後の楽曲で主人公は歌います。
「私は私」。

これこそが、自己肯定です! 
ダメな自分も含めて、自分を認める。

自己肯定とは、自分が立派になって、それを肯定することではなく、
ダメな自分ときちんと向き合い、それを肯定すること。
紆余曲折を経ながら、少しずつ主人公が変化していく、
前に進んでいく姿は、
自己肯定感が低い人ほど共感できるはずです。
 
ということで、凄い作品を見てしまった。
想像以上に傑作すぎて、魂が震えます。

今年のベスト10の何位に入れるか、悩むことになりそう。
上位に入ることは、間違いないです。

『ディア・エヴァン・ハンセン』樺沢の評価は・・・★★★★☆ (4・6)

追伸 
10代の自殺は、コロナ禍にいて、日本でも急速に増えています。
海外の話と、人ごとではない。
ということで、一人でも多くの人に見ていただきたい作品。

『ディア・エヴァン・ハンセン』の予告編を見る
https://youtu.be/W0pbw846tiM

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