書評/映画評

あなたにとっての『銃』は何か? 〜無力感と万能感

映画『銃』を見ました。

先日の『情熱大陸』に登場していた、若手の注目俳優・村上虹郎主演。
芥川賞作家・中村文則の同名デビュー作の映画化。
そして、『百円の恋』の武正晴監督のメガホン。
ということで、期待値ポイントが3つもあります。

思った以上に骨太な作品で、
見応えがありました

合コンに行き女性と遊んだり、ごく普通の大学生であるトオル。

彼は、ある日、一丁の拳銃を偶然拾い、銃を手に入れたことで、
人生が変わっていく。

銃にとりつかれたようになり、
銃を持つだけで「高揚感」に支配され、
銃を使ってみたいという衝動にとらわれていく。

多くの大学生が持つ無力感、つまらなさ、無気力的なものが、
「銃」との出会いにより、「のめり込む」何かを見つけ、
精神的な充実を感じるようになっていく。

心理学的に言うと「万能感」。
自分が圧倒的な力を手に入れたという万能感、
あるいは優越感。

それが、トオルの冒頭の無気力ぶりからのギャップによって
見事に表現されているのがおもしろい。

そういえば、武正晴監督の『百円の恋』は、
主人公の無気力なコンビニバイトの女性が
ボクシングとの出会いによって「生きている」という実感を味わう作品。
とても共通点が多い。

『銃』というのは、非常に特別なものではありますが、
この作品はあなたにとっての『銃』は何ですか?
ということを問うているように思うのです。

あなたは、トコトン熱中できるものがありますか?
あなたの人生を狂わすくらい。

私にとっては、「YouTube」が「銃」かもしれない。

「YouTube」の拡散力、威力、パワーには、
とんでもないものがあります。

3日で数万人が見る動画もある。
そして、その動画は、数万人に対して、はかりしれない影響力を与えるのです。

ある種の「力」を手にすることの
「喜び」「恍惚」「自信」「おごり」「油断」「慢心」。
ポジティブとネガティブの両方の感情が湧き上がります。

つまらない人生を、いきいきとしたものに変えるためには、
「銃」のような「武器」あるいは「道具」が必要なのかもしれません。

もちろん、その武器は、
コントロールされる必要があるのですが・・・。

村上虹郎の謎めいた演技。
そして、モノクロの独特の映像など、見応えのある映画であります。

映画『銃』 樺沢の評価は ★★★☆

 

 

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