書評/映画評

レディ・バード(ゴールデングローブ賞受賞作) ~母娘は和解できるのか?

映画の当たり連続中!

 

今、上映中の映画で、おもしろそうな映画がないかと思い検索したら、
私の直感が「『レディ・バード』を見ろ!」と叫んだ。

 

全く予備情報がなかったが、
予告編を見たらおもしろそうなので、すぐに見に行くことにした。

 

六本木と有楽町など、数館でしかやっていないので、
六本木まで足を運ぶ。

 

でも、わざわざ来たかいがあった。

 

母と娘の確執と和解。

『アイ・トーニャ』など、最近、このテーマが多い気がする。

 

ここまで来ると偶然とは言えない。
もはや必然!!

 

「母親」と映画のテーマで一冊書け!
という神の啓示であろうか。

 

ごく普通の高校3年生の女の子のレディ・バード。
卒業を前にしたごく普通の1年間の生活が描かれる。

 

違うのは、サクラメントという地方都市のカトリックの高校を
舞台にしていることくらいだろう。

 

実は、それが本作の大きなアクセントであり、
重要な伏線になっている。

 

カリフォルニア州サクラメントに住む主人公レディ・バード。

 

大学は、大都市に出たい! という願望を持つわけだが、
これもまた田舎に住む多くのアメリカ人が共感するポイント。

 

NYの大学に行きたい!
と思っても、成績や学費の問題など、現実が重くのしかかる。

 

州外の大学に進学するか、地元の大学にとどまるか。
『アメリカン・グラフィティ』以来、
数えきれないほど映画のネタになっているが、
アメリカ人はこのテーマには強く共感する。
誰もが通る道だから。

 

もの凄い大事件がおきるわけではないが、
アメリカ人高校生にとっての「あるある全集」のように
誰もが経験し、乗り越える、
よくある青春の出来事に、多くの人が共感し感動したのだろう。

 

多くのアメリカ人が通過する青春の、
「通過儀礼」といってもいい。

 

サクラメント出身の女性監督グレタ・ガーウィグが、
自らの高校の頃の実体験を自伝的な要素も含めて脚本に
まとめているだけあって、
ものすごい「リアル」で「等身大」の物語になっている。

 

「普通を描く」というのは、実は
ものすごく大変なことだというのがよくわかる。

 

第90回アカデミー賞で作品賞ほか6部門にノミネート。
主演のシアーシャ・ローナンは、主演女優賞にノミネート。

 

しかし、アカデミー賞は逃したものの、
ゴールデングローブ賞作品賞&主演女優賞を見事に受賞!!
2017年、アメリカで最も注目された映画の一本である
ことは間違いない。

 

よくある高校生の青春物語、

 

しかし、それは「母親と娘の確執」もよくあることなんだよ、
ということを示している。

 

これこそが、この映画の真のテーマではなかろうか。

 

親との確執というのは、
自分の家にだけ存在する不幸と思うかもしれないが、
そんなことはない。

 

どこの家にもある。
ごく普通の出来事。

 

父親との確執。
母親との確執を乗り越えて成長する。
一人前の大人へと。

 

それが、当たり前の青春映画の中で、
当たり前に描かれる意義は大きい。

 

親と対立したり、喧嘩したりすることは、
よくあることなんだから!

 

「反抗期」という言葉が存在するように、
反抗、対立するのが青春。

 

父親、母親との確執。そして、和解もまた、
青春の「通過儀礼」というわけで、人生のスパイスのようなもの。

 

レディ・バードの性格が、めちゃくちゃ明るくて癒やされる。
母親との関係も、険悪な印象を残さない。
見ていて楽しい気分にしてくれる。

 

とっても、素敵な青春映画。

 

母娘のテーマ。しっかりした人物描写、心理描写の映画を
見たいという方に、お勧めの一本。

 

樺沢の評価 ★★★★☆

 

追伸1
母親の視線で見ても楽しめる。
「ここまで、子供に尽くしても、なぜ子供は理解してくれないの・・・」
その答えが、この映画にはあります。

追伸2
『デッドプール2』もおもしろかったのですが、
『レディ・バード』の方が圧倒的に良かったので、
優先して紹介させていただきました。

 

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