書評/映画評

デトロイト〜差別は昔の話!? 

日本に生まれて良かった、とつくづく思う。

映画『デトロイト』、初日鑑賞。
魂が揺さぶられる、というよりも「魂が打ちのめされる」のが正しいだろう。

ものすごく怖い。
そして、不条理でやるせない。

冒頭40分も続く「暴動シーン」と「凄まじい暴力描写」に、
心臓のドキドキが止まらない。

『ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティ』の
キャスリン・ビグロー監督作品。

前作にも通じる、手待ちカメラによるドキュメンタリー風の映像が、
臨場感があって、「リアル」な恐怖感を生み出しています。

目を背けたい。
しかし、目をそらしてはいけない「実話」であり「現実」。

映画が終わった後、ドーンと気分は落ち込む。

とんでもない話だが、「実話」なのだ。

激しい人種差別がまかり通っていた。
1967年。
こんな事件が、わずか50年前に起こっていたとは。
私が生れたころじゃないか。

この映画を「今」、作る意味は何なのだろう。
歴史を風化させないということか。

これは、デトロイト暴動という特殊な状況で起こった、
チョー特別な事件なのか。

それとも、あたりまえに存在していた「差別意識」が現れた、
「当たり前の事件」を描いたものなのか。

白人警官による黒人射殺事件が最近も起こっていることを考えると、むしろ後者。

というか、1967年と今も状況は変わっていない、という問題告発だと思う。

試しに「警官 黒人射殺」で検索すると、
最近でも、無防備な黒人が射殺される事件が多発していることがわかります。

>武器を持たない15歳黒人少年を射殺した警官、殺人罪で起訴
(2017年5月)
https://www.huffingtonpost.jp/2017/05/06/story_n_16444724.html

>白人女性の警官が黒人男性を射殺、男性は両手を上げていた
https://www.huffingtonpost.jp/2016/09/21/oklahoma_n_12112758.html
(2016年9月)

>マイケル・ブラウン射殺事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B1%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%B3%E5%B0%84%E6%AE%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6
(2014年8月)

さらに、無罪判決を受けて暴徒化する事件まで
発生しているのです。

>黒人射殺の白人元警察官に無罪 デモ暴徒化
(2017年9月)
https://www.news24.jp/articles/2017/09/16/10372730.html

どうみても「昔の話」では済まされない。

現実のアメリカ。

人種差別は昔の話。ではなく、
2018年の現在にも歴然として存在するのです。

実は、そこが映画以上に、一番、恐ろしかったりもするのです。

日本に住む限り、警官に射殺されることはまずないので、
治安の良い日本に生れて本当によかったと、
改めて思うのです。

暴力描写が苦手な人にはお勧めしませんが、
骨太な映画が好きな人には、「目撃」する価値のある映画です。

映画『デトロイト』公式サイト
https://www.longride.jp/detroit/



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