書評/映画評

夫や妻の「しゃくにさわる」を一瞬で消す方法  ~ 「なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか」

夫や妻の行動や性格を変えようとするのは、やめませんか?

なぜならば、成人した人間の行動や性格を変えるのは、
不可能ではないにしても、膨大なエネルギーと時間を費やし、
多くの場合は、徒労に終わるからです。

私のYouTube「樺チャンネル」では、一般から質問を募集していますが、
寄せられる質問の半分近くが、
「人の行動や性格を変えられませんか?」
という相談なのです。

「妻が片付けをしないので、きちん片付けられるようになってほしい」
「妻がいつもイライラしているので、何とかする方法はありませんか?」
「夫がいつもイライラしているので、何とかする方法はありませんか?」
「夫は帰宅してもお酒ばかり飲んでいるので、何とかなりませんか?」

といった、似たような質問が、毎週のように、山ほど届きます。

人の行動を変えようとするのは、1トンくらいある巨大な石を
素手で動かそうとするようなものです。

絶対に不可能とはいいませんが、ものすごくたいへんで、
エネルギーを消耗します。

そんな、夫や妻のしゃくにさわる行動を一瞬で消す方法があります。

それは、夫や妻の気持ちを「理解」するということです。

理由がわかると、その瞬間にストレスは消えます。

夫や妻のしゃくにさわる行動は変えられないけども、
そこから生ずる「ストレス」は一瞬で消すことができます。

「なんだ、そういうことだったのか」と理解した瞬間、
ストレスが共感に変わるのです。
 
人間関係のストレスの90%は、
相手を理解することで、消すことができます。

夫がイライラしているとしたら、
「なぜ、夫がイライラしているのか?」その真の理由さえわかれば、
腹が立たなくなります。

意味不明、理解不能なので、腹が立つのです。

夫がイライラしている理由が、自分にあるとしたら、
自分の言葉や行動を変えれば、夫のイライラは消えます。

理由が分かれば対処法も見えてきます。

真の対処法は、「相手を変える」ことではなく、
「自分が変わる」ことなのです。

では、「夫の気持ち」「妻の気持ち」を理解するのには、
どうすればいいのか?

そのために、とても役立つのが
夫婦問題カウンセラー、高草木陽光さんの新刊
『なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか』
(左右社)
です。

「家庭に求めるもの」「幸せの感じ方」「両親」「仕事」
「家事」「育児」「相談」「夢」「老後の生活」など、
夫婦関係で問題となりそうな38のシュチエーションについて、
夫と妻の考え方の相違を明快にまとめています。

例えば、「家庭に求めるもの」であれば、

夫 居場所と居心地を求める
妻 安心と安定を求める

といった具合に。

「男性」と「女性」の心理学的な考え方の相違にもとづいて
書かれていますので、普遍的であり、
誰にでも当てはまるといえます。

そして、夫に対してのアドバイス、妻に対してのアドバイスが
明快に、極めて具体的に語られています。

つまり、我を張り合わないで、
お互いに一歩ずつ、歩み寄れば、夫婦問題は解決する、
ということです。

この本を読むと、

「なぜ妻は、〇〇をするのか?」
「なぜ夫は、〇〇してくれないのか?」

といった、行動の理由が、明快すぎるほどスッキリとわかります。

ですから、対処法も明快です。

例えば、夫婦の幸福度を上げる方法としては、

夫に対しては、
「自己好感を満たすために、”良いところを見つけてほめる”
 ”スキンシップを増やす”」

妻に対しては、
「自己重要感を満たすために、”さすが!””スゴイね!””頼りになる”などの
 言葉がけを増やそう」

と書かれています。

具体的にどういう言葉をかければいいのか、
ということまで書かれていますので、
行動に移しやすいのです。

この本を読んで思ったのは、
「夫婦問題カウンセラー」という呼称は、
 やめたほうが良いのではないか?
ということです。

「夫婦問題カウンセラー」というと、
離婚直前の夫婦に介入して、精神的に支援する人、
というイメージですね。

多くの人は、「私には関係ない」と思うでしょう。

でも、この本を読んで思ったのは、
著者の高草木さんは、
「夫婦問題カウンセラー」というよりも
「夫婦関係改善カウンセラー」だということです。

この本の内容が真に必要なのは、
「離婚直前の夫婦」ではなく、
「普通の夫婦」であるということ。
 
「うちは、離婚とか、そんなひどいことはないから」
という夫婦でも、
「じゃあ、何一つ問題のないラブラブの夫婦ですか」というと
そういう夫婦は本当に少ないと思います。

可もなく、不可もなく。
互いにいくつか不満を持ち合いながらも、
何とか我慢して、夫婦関係を維持しているのが、
多くの夫婦ではないでしょうか。

夫婦関係の「−10」を「−5」か「0」にするのが、
「夫婦問題カウンセラー」のイメージですが。
 
「0」を「3」にする。「5」を「8」にする。
ちょっとした、夫婦の理解で、
夫婦のコミュニケーションを深められる

そんな事例と方法がたくさん紹介されています。

夫婦仲は良ければ良いほどいいし、
夫婦コミュニケーションは多いほど、深いほどいいのです。

ということで、
夫婦関係を、改善する。より親密にする。
夫婦仲がよくなる仕事をしているのですから、
「夫婦関係改善カウンセラー」のピタッとくるのではないかと
思ったわけです。

ということで、
「夫婦仲をよくしたい」全ての人にお勧めしたいのが、
この『なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか』です。

この本を読んで「スゴイ」と思ったのは、事例の多さです。

各項目ごとに、1〜2個の事例が紹介されていますので、
全部で50以上の事例が登場します。

あるものは、クスッと笑いたくなる。
あるものは、共感し、感動してしまう。
あるものは、あまりにも生々しく目をそむけたくなる。

と言った具合に、チョー具体的で、現実的で、生々しい
事例がたくさん盛り込まれていますので、
イメージしやすいのです。

良い本の必須条件は、「事例が多い」ことです。

1万社のコンサルをしたコンサルタントの本に、
事例が3個しかのっていないことはよくあります。

本当に1万社コンサルしたのかよ、と突っ込みたくなります。

高草木さんは、
夫婦問題カウンセリングを7,000件以上している
と書かれていますが、この具体的な事例を読めば、
彼女の経験値の高さが半端ないことがわかります。
 
256ページの濃密な内容。
これを書くのに膨大な時間がかかったことでしょう。
非常に骨太で、二度三度よく読みたくなる本です。

結婚している全ての人に読んでほしい。
そして、読めば、必ず、夫婦関係が、今よりよくなります。
 
そんな素晴らしい一冊。
ホームラン本に認定していいでしょう。
 
『なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか』
(高草木陽光著、左右社)