書評/映画評

「うつ」は炎症で起きる ~心ではない原因でうつが起きている可能性

『「うつ」は炎症で起きる』

かなり骨太で専門的な本なので、
専門家でない限り、無理して買わなくてもよいとは思いますが、
この本に書かれている主な内容については、
全てのうつ病患者さんが知っておいて損はないと思いますので、
その内容を紹介します。

うつ病やその他のメンタル疾患もそうですが、
ストレスや幼少期の体験とか、「心」が原因で起きる
と長い間、考えられていました。

それが、うつ病というのは、
セロトニンやノルアドレナリンといった脳内物質の低下
と関連がある、ということがここ数十年の研究で明らかにされ、
セロトニンをターゲットにした抗うつ薬が開発されてきました。

「うつ」は、「心」が原因で起きるのか?
科学物質が原因で起きる、器質的な原因で起きるのか?

それは、今も続く精神医学の世界の議論でありますが、
この本ではケンブリッジ大精神医学科長の著書が、
「炎症」という、新しい器質的原因を紹介しています。

脳内の微細な炎症が、「うつ」の原因になっている可能性がある。
というたくさんの証拠を示しています。

「うつ」は炎症で起きる、という話を聞いて、
「えっ! 本当?」と驚く人は多いでしょうが、
専門家から見ると、
「やっぱり、そうだよね」というのが最初の感想となります。

実は私は、昔「インターフェロンによるうつ」の研究していて、
それに関する論文をたくさん書いています。

C型肝炎の治療薬であるインターフェロンを投与すると、
非常に高い確率でうつ症状が起きるのです。

インターフェロンというのは、
ウィルス増殖を抑制する「サイトカイン」という免疫物質、炎症物質の一つです。

インターフェロン投与で「うつ」が起きるというのは、
まさに「炎症物質」によって「うつ」が起きるという、一つの証明です。
本書でも、その辺は言及されています。

うつ病の患者さんは、
ストレスホルモンである「コルチゾール」が高値となりますが、
なぜうつ病やストレスにおかれると、コルチゾールが分泌されるのかは、
よくわかっていません。

しかし、コルチゾールというのは、強力な「抗炎症物質」ですから、
うつの原因が炎症であるのなら、そこでコルチゾールが分泌されるのは、
非常に納得のいく話となります。

本書では、社会的なストレス、外傷、肥満、炎症性疾患などをきっかけに、
ミクログリアがサイトカイン(炎症物質)を放出し、
サイトカインが神経細胞を傷つけるという仮説を提出しています。

メンタル疾患は「心」が原因である。
と考えると、「子供の頃の親の育て方が悪かったから」とか、
過去のちょっとしたでき事が病気の原因として関与している、
と思い込んで、親を責めたり、自分を責めたりして、
余計、うつを悪化されるということがあります。

慢性的な精神ストレスでも、
脳に負荷をかけて炎症を引き起こす可能性があるようですが、
「炎症」が原因と考えれば、
「内科」の病気と変わらないわけですから、
自分や家族を責める。自責的になって、余計に落ち込む、
ということは減るのではないでしようか。

メンタル疾患が科学的に解明されることによって、
精神疾患に対する偏見や歪んだ考えが少しでも減ることは、
良いことだと思います。

この本のタイトルは『「うつ」は炎症で起きる』ということですが、
一部の「うつ」は、炎症で起きている可能性については、
非常に高いと思いますが、
全てのうつが、炎症で起きているわけではないと思われます。

その辺だけ、誤解しないでいただきたい。

うつ病の原因は何ですか?

YouTubeでも、とても多い質問の一つですが、
「心の原因」以外の要素が大きく関与している可能性が十分にある。、
というのが本書が伝える重要な内容。

だから、
「自分が〇〇しなかったから」
「親が〇〇したから」
「会社が〇〇したから」うつ病になった、
という犯人探しは、もうやめた方がいい。
百害あって一利なしなので。

『「うつ」は炎症で起きる』
(エドワード ブルモア著、草思社)

【全動画プレゼント】
あなたの悩みの95%は解決する。
YouTube「樺チャンネル」の全動画1500本のリストをプレゼント中。
今すぐダウンロードしてください。
https://canyon-ex.jp/fx2334/z6j0NW

↓ 【樺沢紫苑公式メルマガ】の登録はこちらから(※メールアドレスを入力)

コメントを残す

*

CAPTCHA