村上春樹の短編小説の映画化作品、
『ドライブ・マイ・カー』を見ました。
魂が揺さぶられた! 素晴らしい!
こんな本格的な映画、滅多にない。
そして、カンヌ映画祭で絶賛された理由も本当によくわかった。
原作があまりにも有名すぎる作品の映画化は、
だいたい熱心なファンからバッシングされるものですが、
本作はハルキストほど心を動かされるのではないでしょうか。
もともと本当に短い短編である『ドライブ・マイ・カー』。
それがなんと2時間59分もの長編になっていると最初聞いて、
「一体どうやって作った?」と思いました。
実際見てみると、原作の重要なエッセンスは全て残しながら、
主人公の設定などを大幅に変えたり、書き加えたり。
しかし、その書き加えられたセリフが、
「いかにも村上作品の人物が言いそうなセリフ」だから、
クラっとするのです。
また、「映画祭の舞台の演出をしていく」という設定を加えたのは、
本当に大成功。
圧倒的にストーリーがドラマティックになると同時に、
「言語的」「非言語的」に”伝える”。
人に何かを「伝える」ことの難しさ、たいへんさのテーマが、
より明確に、よりストレートに響いたと思います。
また、ちょっと意味深で、時にエロティックな表現もある
春樹作品のセリフを、西島秀俊の演技で見事に演じられる。
村上春樹ファンほど楽しめる作品。
なので、村上作品を見たことがない人が、
本作をどこまで楽しめるのかはわからないけども、
村上作品が大好きな私にとっては、
最近の映画は、展開が早い、テンポの良い映画がほとんど。
しかし、本作の物語のはじまりは、ものすごくスローである。
そう、正に春樹作品のよう。
主人公と女性ドライバー、「みさき」の心の交流が描かれるはずが、
ドライバーの「みさき」がなかなか出てこない。
序盤のシーンは、よく言えば「丁寧」で、悪く言えば「冗長」。
しかし、それらは全て「伏線」であり「心理描写」であり、
絶対になくてはならない不可欠な描写であったことが、
最後の最後にになってわかってくる。
これまた、春樹作品の展開を踏襲している。
本作のテーマは、コミュニケーション下手な主人公と女性ドライバー。
最初は無口で会話すらなかった2人が、
次第に自己開示をし、打ち解けていく。
2人は大きなトラウマ、「喪失体験」を持っていて、
2人の交流でそれを癒やし合う。
と言葉で書くと、なんとも陳腐だ。
しかし、実際は、淡々とした春樹節の台詞と、
そして表情をほとんど変化させない西島と三浦透子の演技で
手に汗に握るほどスリリングに表現されている。
一見すると実に単調。
しかし、その心の内をイメージするならば、
なんと劇的なドラマであろうか。
些細な表情の変化、つまり演技力で「心の内面」
「微妙な心の変化」が描かれていて、
見るほどに劇中の世界に引き込まれていく。
「妻」は、最も身近な存在でありながら、最もミステリアスで、
なかなか相容れることのできないやっかいな存在。
という春樹作品に何度も登場してきたテーゼ。
今まで感覚的には理解していたものの、
真に腑に落ちなかったものが、本作で映像として描かれることによって、
ああそういうことだったのかと、真に腑に落ちた。
パートナーの欠点やネガティブな部分も全て受け入れて
愛することの「大切さ」と「難しさ」を
映画のクライマックスで突きつけられる。
愛するとは何か?
夫婦のコミュニケーションはどうあるべきか?
そんなことを考えながらも、
圧倒的に「愛」のあるラストに魂が揺さぶられた。
大幅にストーリーを追加しながらも、
村上春樹の世界観をくずさずに、
原作のポイントを見事に活かしながら、
精緻に作り上げられた本作の脚本凄すぎる。
そして、カンヌ映画祭では日本映画初となる脚本賞の受賞。
見事な脚本を仕上げた濱口竜介監督・脚本は凄いが、
それを理解し評価したカンヌ映画祭の審査員も凄い。
村上作品をかなり読み込んでいないと
本作の脚本の凄さはわからないと思うから。
パートナーシップ。夫婦関係の難しさ。コミュニケーションの難しさ。
それでも、コミュニケートすることで活路は開かれる!
そして、人を癒やすのは人。
そして、あなたを癒やす人は、意外と身近にいるかもしれない・・・!!
とにかく、いろいろと考えさせる!
間違いなく、傑作!
現時点で、今年見た映画の上位3本に
入ることは間違いないでしょう。
『ドライブ・マイ・カー』 樺沢の評価は・・・ ★★★★☆ (4・7)
追伸
村上春樹の作品が好きな方には、圧倒的に楽しめ、
そして魂が震える一作。
ただ、春樹作品を一本も読んでいない人が、本作をどう見るのか?
私には予想不能です。
追伸2
上映が、都内では「TOHOシネマズ」など、
上映館が少ないのでお見逃しなく。
『ドライブ・マイ・カー』予告編
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村上春樹先生の本を読んだことなく
樺沢先生のコメントだけを頼りに
「ドライブ・マイ・カー」見てきました❗️
最高‼️の映画です❗️
静かに心を揺さぶられ、最後は自然と涙が溢れて出てきました。
なんの気なしに、興味本位で行ってきましたが、50歳となった私には、映画とリンクする環境と心情の真っ只中でしたので、映像という形で表現されたこの作品は、本当に素晴らしい映画と思います。
映画を見て、村上春樹先生の本を読んでみたくなりました。
樺沢先生、ご紹介くださって
本当にありがとうございます❣️
村上作品は好みではありませんが、映画が好きな人には関係ないです。全てがよかったです。心つかまれました。
岡田将生の車中の台詞と演技が印象深い。すごい監督です。