日本歴代3位となる興行収入を記録した
大ヒットディズニーアニメ『アナと雪の女王』の続編。
ということで、期待した人も多いのではないでしょうか?
前回の「レット・イット・ゴー」の圧倒的なインパクトと比べて、
新しい楽曲のインパクトがいまいち。
また、ストーリー展開が「難しい」「よくわからなかった」
という意見も多く、特に「ラスト」に不満や疑問を
持った人も多いようです。
私は、ディズニー映画としては、
子供向けの薄っぺらい映画が多い中、
「骨太なストーリー」を結構楽しめたので、
意外と高評価です。
『アナと雪の女王2』 樺沢の評価は・・・ ★★★☆ (3・9)
どっしりとしたキリスト教的な世界観をもとに作られていますので、
その辺がわからないと、この映画を理解することは難しいでしょう。
ということで、今回は完全「ネタバレ」で、
謎と疑問が多い『アナと雪の女王2』について解説したいと思います。
【以下、ネタバレ
ラストシーンも含めて、
ストーリーについて詳細に書かれていますので、
映画を未見の人は、ご注意ください】
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【以下、ネタバレ】
■死んで、復活したら救世主
アメリカ映画を見る上で、
覚えておくて良い「法則」があります。
一旦、死んだ人物が復活したら、それは「救世主」である。
イエス・キリストの「復活」のイメージを重ねあわせて
描かれている、ということ。
例えば、
『ハリーポッターと死の秘宝』のハリー・ポッター。
ヴォルデモートとの決戦で、ハリーは殺されます。
しかし、その後復活し、ヴォルデモートを倒します。
あるいは、
『マトリックス』のネオ。
ネオとエージェントスミスとの決戦。
ネオは、エージェントスミスの放った銃弾に当たり死にます。
しかしながら、その後、トリニティーの言葉によって、復活。
超人的なパワーを発揮しスミスを駆逐します。
もともとモーフィアスは、救世主を探していたし、
ネオ「NEO」は、「ONE」のアナグラム(文字の並び替え)。
「the one」というのは、「予言されたその人」
ということで、「救世主」を示します。
ちなみに、トリニティとは「三位一体」。
そして、「三位一体」の象徴である「聖母マリア」を示します。
■エルサは死んだのか?
さて、エルサの場合は、どうでしょう?
洞窟の深い底のようなところに入るとき、
エルサの髪型がほどけてロングヘアーになり、
別人のような姿になります。
(変化・変容)
そして、身体が動かなくなる。
その後、アナとエルサのシーン。
オラフの動きが止まり、白い粉となって、消え去ります。
エルサの魔力によって生まれたオラフ。
その魔力が消えた、イコール、エルサの死を意味します。
エルサは死に、オラフも復活。
しかし、その後、エルサは復活。
神がかった強さと、圧倒的な魔法の強さ発揮して、
破壊されたダムから流れ込む大量の水を凍らせ
(奇跡を起こし)、お城と村を守ります。
災厄は取り除かれ、全てが丸く収まりました。
エルサとアナは、仲良く一緒に暮らすと思いきや、
エルサは、一緒に住めない。
「ノーサルドラ」に住むと言い出します。
ここが、この映画の一番の謎でしょう。
結論から言いますと、
アレンデール=この世、現実、
ノーサルドラ=あの世、彼岸、天上界、魔法(非現実出来なものが支配する)の世界
だとすると、「死んだエルサ」「天したエルサ」が
住むべき世界は、どちらでしよう?
当然、「あの世」の象徴である「ノーサルドラ」であるはずです。
しかしながら、
「エルサは、本当に死んだのか?」
「いや、エルサは死んでいない」
という反論もあるでしょう。
そんな人は、映画をきちんと最後まで見てくださいね。
私も、映画を見ていて、エルサが本当に死んだのか、
実は半信半疑だったのですが、
クレジットが終わり、オラフが出てきて、
本作のストーリーを簡潔に復唱します。
その中で言います。
エルサ死んだ。
オラフ死んだ。
アナ悲しんだ。
映画を理解できず、あやふやな観客に、
改めて正しい情報を伝えるために
このシーンが追加されたのでしょう。
つまり、「エルサ死んだ」ということ。
確定です。
■救世主の物語
『アナ雪2』のストーリーを要約します。
召命(Call)→試練→死→復活→昇天
これは、救世主イエスの物語と全く同じです。
冒頭の精霊からの呼び声が聞こえる、というのは、
「召命(しょうめい)」。
神からの呼び出し、メッセージなわけです。
「みんなで仲良く暮らしていたのに、
なぜわざわざ冒険に出る必要があったの?」
という質問がよくありますが、
その答えは、「神からの召命されたから」です。
エルサの助けになろうとするクリストフ。
(あまり、役にはたっていないいけども)
クリストフの名前の語源は、「クリストファー」です。
クリストファーとは、「キリストを運ぶ・担うもの」という意味。
クリストフは、スヴェン(トナカイ)と一緒に、
彼の馬車で、エルサとアナを「運び」ます。
クリストファー=キリストを運ぶ者
クリストフに運ばれたエルサは、キリスト(救世主)
というわけです。
■2つの世界
閉ざされた森。
普通の人は入り込めない世界。
それは、「異世界」。
「異世界めぐり」というのは、
ファンタジーやSFの最もよくあるストーリー展開の一つ。
『千と千尋の神隠し』『不思議の国のアリス』
『オズの魔法使い』『ナルニア国物語』など全てそうです。
冥界に行って戻る話は、神話や聖書、ダンテの『新曲』など
にも出てきます。
最後に、エルサは、2つの世界の「架け橋」となった、
と言います。
それは、「アレンデール」と「ノーサルドラ」の架け橋となった、
ということ。
「アレンデール」の意味するものは、「現実」世界ですが、
「ノーサルドラ」の意味するものは?
「ノーサルドラ」の人々は、魔法を普通に使っていました。
つまり、形而上の世界、物質の世界ではない精神世界、
のイメージ。
あるいは、「ノーサルドラ」で、
エルサは死んだ父や母と遭遇するわけですが、
死者がいる世界なわけです。
それは、「あの世」「彼岸」といった世界。
「この世」と「あの世」。
キリスト教的に言うと、「地上界」と「天上界」とも言えます。
■調和とバランス
水・火・土・風という四大元素のバランスが崩れた世界。
そこに、5つ目のエレメントである「エルサ」が現れ、
調和をもたらす、という話。
リュック・ベッソンの映画『フィフス・エレメント』というのがありましたが、
フィフス・エレメント(5つ目のエレメント)は、
世界を救う5つ目の鍵、つまり「救世主」として描かれていました。
世界に調和がもたらされたとき、
森を包んでいた霧は消えて、人々は森から出られるようになりました。
そして、トナカイが走り出し、円を描くように走り続けるのです。
「円環」。
バランスがとれた、
調和がもたらされたという、映像的表現です。
この「円環」の映像を見て、
タロットカードの「ザ・ワールド(世界)」を思い出しました。
タロットカードの21番目、つまり最後のカードが
「ザ・ワールド(世界)」です。
月桂樹の丸い輪の中で、
軽やかに踊る女性(女神?)が描かれています。
その意味は、「世界の完成」「完全なる調和」です。
また、「ザ・ワールド」のカードの四隅には、四聖獣が描かれていますが、
四聖獣は水・火・土・風という四大元素を象徴しています。
つまり、「ザ・ワールド」は、女神が
四代元素のバランスがとれた状態、完全なる調和、
世界の完成をもたらした、ということ。
まさに『アナ雪2』のストーリー
そのものと言ってもいいでしょう。
四代元素のバランスというテーマは、
タロットカードが作られてエジプト時代から、
何千年も受け継がれているテーマといえるのです。
■なぜエルサは、ノーサルドラの住人となったのか?
さて、イエスの物語、
神の子であるイエス、は、神の分身、代理、
として「地上界」に遣わされるわけですが、
復活した後、昇天して天上界へと「帰って」いきます。
エルサというのは、もともと天上界の住人。
だから、地上界においても「魔法」を使うことができた。
(イエスは数々の奇跡を起こしたように)。
ですから、自分のいた世界、本来、
自分のいるべき世界に「帰る」というのが、ラストシーンです。
別に、不思議でも、謎でも、何でもない。
当然の帰結です。
もともと「ノーサルドラ」の住人であるエルサは、
当然「ノーサルドラ」に帰還することが、
世界の完成であり、調和なのです。
さて、最後の疑念。
映画の最後に「今週末、お茶会するから来てね」的なやりとり。
ユニコーンにのってエルサはアナに会いに行くという映像。
「そんなに簡単に行き来できるんかい?」
「それだったら、アレンデールに住んどけ」
というツッコミが入りそうで、
多くの人にとって、頭を抱えたラストシーンとなったはずです。
でも、エルサ=救世主とわかったら、
別に難しくも何ともない。
結論から言うと、
「イエス様は、いつも私たちと共にいらっしゃいます」
ということです。
イエス様は、現実の世界にはいないけども、
「イエス様、私たちをお助けください」とお祈りします。
それは、
「イエス様は、いつも私たちと共にいらっしゃる」
からです。
別世界でありながら、つながっている。
私たちをいつも見守ってくれていて、
呼びかければ、すぐそこにいらっしゃる存在。
そんな、救世主イエスは天上の世界にいながらも、
私たちのそばにいる。
そんな親近感を、
エルサとアナの精神的なつながりとともに、
映像的に表現しているのが、この映画のラストです。
一言で言うと、
救世主としてのエルサは、
世界を救い、世界に調和をもたらした、という話。
キリスト教的な知識があれば、そう難しくない話ですが、
日本人にわかりやすく解説すると、これだけの長文になってしまうのです。
ディズニー映画で、ここまで骨太なバックボーンの作品は少ないので、
私は非常に楽しく見ることができました。
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