書評/映画評

デヴィッド・リンチ:アートライフを見て〜精神疾患の抑止力としてのアート

映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』が、
おもしろかった!

「難解」とか「わけがわからない」と言われるリンチ作品ですが、
本作を見ると「ああ、そういうことか」と気付きが、
たくさん得られました。

映画も小説も、個人の体験の投影なのです。
作家について詳しく知ることで、
より「作品」の奥深い世界に入っていくことが可能です。

本作では、リンチ監督が、幼少時代、父親、母親との関係。
思春期、大学時代。

そして、映画作家としてロサンゼルスに渡るまでの
若き頃のリンチ監督の生き様を、
自らの言葉で語っています。

陰鬱とした気分で絵を書き続けた高校、大学時代。

大学の入学前は、2週間一歩も外に出なかった、
と言いますが、これは「引きこもり」と紙一重の状態、
し言えるかもしれません。

リンチ監督の作品には、
「抑うつ」や「統合失調症」を疑わせる人物が
よく登場します。

つまり、

リンチ監督自身が、

何かしらのメンタル疾患を経験していたのではないか・・・

というのが、私の以前からの疑問なのですが、
本作を見ると「病気」として「発病」まではしていないが、
かなり「発病」寸前の、ギリギリの心理状態を経験していた
ことは、間違いなさそうです。

画家、小説家、音楽家など、
芸術家には、「メンタル疾患」を患った人が多い。

有名なのは、ゴッホ。
日本人だと、芥川龍之介や夏目漱石。

ゴッホの作品などを見るとわかりやすいですが、
精神疾患の「負のエネルギー」が、
「他の人にない独特の個性」として花開いたものが、
アートであることがわかります。

そこに必要なのは、「コントロール」です。

「負のエネルギー」が、コントロールできなくなった状態で、
精神疾患が発病します。

負のエネルギーをコントロールして「芸術」「アート」として大成する。
そのギリギリの駆け引きというか、せめぎあい。

それが、『デヴィッド・リンチ:アートライフ』を見ると
よくわかります。

リンチ監督の映画は、圧倒的にコントロールされています。
それは、「言葉」によるコントロール。

本作で、リンチは自分の人生について詳細に、
そして饒舌な語ります。

そして、彼のアート作品、絵画作品にも必ず文字が入っています。
ここまで「言葉」を使いこなす芸術家は少ないと思う。

いるとすれば、宮崎駿くらいでしょうか。

暴走するクリエイティビティ、それをコントロールする言語、
そのせめぎ合いが、実にスリリングに描かれます。

アートは、「病」に対する抑止力となります。
リンチは「病」の領域に入らずに、ギリギリで踏みとどまることができた。
それは、アート。表現という救いがあったからでしょう。

『イレイザーヘッド』『ロスト・ハイウェイ』『エレファント・マン』
『マルホランド・ドライブ』『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』
『インランド・エンパイア』などリンチの6作品が、
リバイバル上映されます。

こんなチャンス2度とないかもしれないので、
全6作品、全て見直そうと思います。

2月は、チョー楽しみで
チョーエキサイティングな一ヶ月になりそうです。

映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』。

デヴィッド・リンチのファンを自称する方は必ず見るべき映画といえるでしょう。
デヴィッド・リンチ監督って誰? という方は、スルーしてください。

『デヴィッド・リンチ:アートライフ』公式サイト
https://www.uplink.co.jp/artlife/



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