書評/映画評

初恋 お父さん、チビがいなくなりました ~夫婦一緒にいるのにぬぐえない孤独感

良い映画、見ました。
『初恋 お父さん、チビがいなくなりました』。  

昭和の映画です。

倍賞千恵子の藤竜也の老夫婦、二人のやりとりがほとんど。
そして、場所は家の茶の間と台所。
時々、将棋会館とかわりばえがない。

つまり、二人の「演技」が全て。
淡々とした人物描写の積み上げ。  

派手な事件が起きるわけでもない。
ちょっとした「心のゆらぎ」、そして最後の「本音の一言」が
魂を揺さぶるのです。   

30年前は、こんなスローなテンポの映画がたくさんあった。
日本映画の多くは、こういう映画だったはず。

しかし、最近はテンポも速く、ストーリーも複雑で、
感動的なテーマ曲がジャンジャン盛り上げる。
沈黙のシーンなど、ほとんどない。  

本作は、「間」や「沈黙」がほとんど。
テーマ曲が数回流れるだけで、あとはBGMもない。
人間描写と演技しかない。
ごまかしようがない。
それが、映画。昔の「映画」。
 

そんな「間」や「沈黙」の間に、いろいろと考えさせられるのです。
「老いとは?」「夫婦とは?」
「うちの夫婦は、コミュニケーション大丈夫か?」
「うちの親も、孤独を感じているのか?」などなど。  

情報量が多い映画は、「受動的」になります。
「見る」だけで、手一杯になるので。

本作のように、スローな映画は、
逆に役者の「表情」や「間」から、何かを読み取る余裕がある。
つまり、映画に対して、「能動的」「積極的」に関われるのです。

逆に、私は沈黙や間が多い分、いろいろと考えさせられたので、
自分が受け取った情報量はとても多く感じられました。

少なくとも、見ている最中に、
これほど考えさせられる映画はあまりありません。
 

『アウトプット大全』では、
非言語コミュニケーションの重要を強調しました。

しかし、本作のテーマは「大切なことは、言葉に出さないと伝わらない」。
つまり、言語コミュニケーションの重要性を訴えています。

私は、見ていて「ドキッ」としました。

自分も、言語コミュニケーションの重要性を、
ひょっとした軽視してなかっただろうか?
親しい人に、言うべきことを言葉で伝えていただろうか?
 

倍賞千恵子の姿に自分の母親の姿が重なり、
映画が終わってすぐに母親に電話をしました。

最近、電話もしていなくて申し訳ない。
年老いると誰でも「孤独」になるのに、自分は全く気遣いを欠いていた。
そんなことも、この映画は気付かせてくれました。
 

倍賞千恵子の圧倒的な演技力、藤竜也の存在感は言うまでもありませんが、
娘役の市川実日子の表情豊かな演技も素晴らしかった。

『アンナチュラルの石原さとみの同僚役で個性的で存在感のある役者さんだなと、
注目していたので、彼女の活躍がとてもうれしいです。  

独身の人、若い人が見ても響かないかもしれませんが、
結婚している人にとっては、「夫婦のあり方」について考えさられる。
深い映画です。

『初恋 お父さん、チビがいなくなりました』

樺沢の評価は・・・・・・・・・ ★★★★☆ (4・5)

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