書評/映画評

はい、泳げません ~トラウマを超えるのは、想像を絶するたいへんさ

映画『はい、泳げません』。
チョーベタなストーリー展開で、サプライズは何一つない。

しかし、トラウマを乗り越えることの大変さが、
一つ一つ、丁寧に描かれます。

なので見ていて、非常に辛い、心が痛みます。
ただ、それは映画に対する最高の賛辞。

人物描写がしっかりとできているからこそ、
心が痛むのです。

しかしながら、水泳教室のおばさんたちが織りなすコメディ要素と、
綾瀬はるかの水泳コーチが「癒やし」となります。

トラウマを受容して乗り越えるのは、本当にたいへんなことです。

最初は、自責(自分を責める)か他責(他人を責める)わけ。

自分の子供を水難で亡くした主人公の雄司(長谷川博己)は、
自分を責めます。一方で、妻の美弥子(麻生久美子)は、
いつもクールで感情を押し殺す夫を責めます。

トラウマを乗り越える為に、自分が泳げるようになる!
と雄司はスイミング・スクールに通いはじめるものの、
時折蘇るトラウマのせいで、なかなかレッスンは進みません。

水泳コーチ静香(綾瀬はるか)のアドバイスが、
非常に具体的でわかりやすい。

「泳げるようになりたい!」という人には、
非常に有効なアドバイスがたくさん含まれています。

苦しみ、精神的に打ちのめされて落ち込みますが、
最終的には受容に至ります。

精神科医キュブラー・ロス(『死ぬ瞬間』)の
受容プロセス、そのものです。

ここまで苦しい思いをしてまで、トラウマを克服する必要があるのか・・・。

私は、全くお勧めしないのですが、
「過去」と向き合い、受容できないと前に進めない、
という人は、確かにいます。

そんなトラウマを持った人には、本作はそれを超えるヒントになるのか・・・。
あるいは、見ていて苦しくなりすぎるので、見ていられないのか・・・。

思った以上に、心理描写がしっかりとしていて、
「骨太」な作品でした。

『はい、泳げません』 樺沢の評価は・・・・・・ ★★★★ (4・1)

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