書評/映画評

ミッドナイトスワン ~生きるのはつらい。それは、あなただけではない。

映画『ミッドナイトスワン』見ました。
一言、「衝撃作」です。

 
トランスジェンダーの凪沙役の草なぎ剛の迫真の演技。
そして、そもそもこの役のオファーをよく受けたな、という驚き。
 
トランスジェンダーが抱える「つらさ」「苦しみ」、
そして「差別」「偏見」の現実を、生々しくリアルに描いている。

中には見るのが辛くなるシーンもある。
つまり、「ガチ」である。
 
トランスジェンダーの凪沙(なぎさ)は、ひょんなことから、
母親の虐待を受けていた親戚の子、一果(いちか)を預かることに。
奇妙な同居生活がはじまるが、一果はバレエに興味を持ち、
バレエに打ち込むことによって癒やされていく・・・。
 
作品の中で、「なぜ私だけが」と凪沙が泣き崩れるシーンが印象的。
自分の不幸な運命に直面したときに、
人は「なぜ私だけが」と想い、自責的になる。

本作では、母親の虐待を受けていた一果も、
全く同じ心境だったはず。
 
多くの人は、「なぜ私だけが」「なぜ自分だけが」と、
自分の不運や環境、出来事に絶望するけども、
メンタル疾患の患者さんも間違いなく
「なぜ私だけが」と思っているし、
コンプレックスや短所を持っている人も、そう思っている。

実は、世の中の意外に多くの人が、
「なぜ私だけが」という感情を抱きながら生きているのではないか? 
ということを、以前から思っていた。
ということで、この「なぜ私だけが」というセリフには、
強く共感するのです。

 
YouTubeへの質問で、
「シングルマザーでも、父性を発揮できますか?」
という質問がよく来るが、
本作は「トランスジェンダーでも母性を発揮できますか?」
というテーマである。

もちろん、父性、母性は「性」を超えたものであるから、
本人さえ真剣に頑張れば、無理ではないのだ。
 
本作の感想として「おもしろい」や「感動した」は、あまりにも陳腐だ。
とはいっても、替わりになる言葉も、思い浮かばない。
ただ、ハンマーで頭を強烈に殴られたような衝撃を受けていることは、
間違いない。

 

草なぎの演技も凄いが、一果を演じた新人、服部樹咲も魅力的。
最初、全く無表情なので心配するが、それは虐待を受けていたから。
後半の表情豊かな演技に、心を揺さぶられる。

また、虐待する母親役が、水川あさみ。
昨日見た『喜劇 愛妻物語』の毒舌の毒嫁に通じるヤンキー的な役柄、
インパクト強すぎて、夢に出てきそうなほど。
 
そう、そして、本作の監督は
『全裸監督』の監督・脚本をつとめた内田英治監督。
ちなみに、Netflixで配信中の『全裸監督』は、チョーーおもしろい。
本作も含めて、内田監督は
樺沢が最も注目する日本人監督の一人なった。
 
万人向けの作品とは言いがたいが、
多くの人がこの作品を見て衝撃を受けるに違いない。

私は、単なる衝撃だけではなく、魂も揺さぶられた。

「無償の愛」が生まれる瞬間

『ミッドナイトスワン』を見てから2日たちますが、
映画のシーンが、時々、脳裏をよぎります。

映画を見てから、
何日もその映画のことを考えてしまう。
そんな映画は、なかなかありません。

それだけインパクトが大きい、ということ。

少し冷静になって思ったのは、
『ミッドナイトスワン』は、
LGPTの映画ではない、ということ。

「生きるのがつらい」という人が、片寄せ合って生きていく、
という話。

私が好きなシーンは、
バレエを習いたいという一果のために、
バレエのお金を稼ぐために、
夜の仕事をやめて、昼の仕事に就職する場面。

関係も薄い親戚の子、
一果にバレエを習わせたところで、
数ヶ月後には一果は自分の元を去って行くことは確定事項。

つまり、何のメリットもない、のです。

しかし、それでも凪沙が必死になったのは、
一果の腕の「自傷行為」を見てしまったから。

一果が、母親からの虐待を受け、
精神的にも追い詰められていた。

それは、トランスジェンダーで社会から
冷たい目で見られていた自分も同じ。

「生きるつらさ」を感じている者として、共感し、
「一果を助けたい」という想いが湧いた。

それって、いいかえると「無償の愛」です。
なかなかできることではありません。

このシーン、
思い出すだけで、目頭が熱くなります。

ということで、
『ミッドナイトスワン』は、
映画を見終わってからも、何日も楽しめる
「余韻」の長い、深いい映画。

昨日のメルマガでは、評価が
★★★★ (4・4) 
となっていましたが、
★★★★ (4・6)
に格上げします。 

『ミッドナイトスワン』予告編はコチラから
https://youtu.be/zBzdu0EURH4

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コメント

  1. 山下明子 より:

    初めまして。
    YouTube樺沢紫苑の樺チャンネルを1ヶ月前にパートナーにすすめられ、今では毎日見ています。というのも、私は現在、うつ状態で3ヵ月程仕事を休職しており自宅療養中で…。パートナーから、私にピッタリの動画みつけたよ!と言われ視聴してみたら、簡潔に分かりやすく病気についてや生き方について語られており、ドはまりしました!特に裏しおんちゃんは、かわいくて最高です!今のところ朝の散歩は週2回程度、日記は毎日書いています。アウトプット大全とストレスフリー超大全と繊細さんの本を購入し、少しずつ読んでいます。

    前置きが長くなりましたが…。笑
    私はもともと映画を観るのが大好きでしたが、体調を崩してからは全然観ていません。コロナで映画館に行けなかったのもあります。
    樺沢さんが映画評論家でメルマガを長年続けられていると知り、メルマガを見ていたら、ミッドナイトスワンのことが書いてあり、私も観たいと思いました。ただ、今の精神状態で、この映画を観るのはどうなのか…胸が苦しくなり過ぎないか心配です。
    主治医に相談したほうがいいのでしょうか。
    一人で観に行かず、信頼できる友だちと行けば大丈夫でしょうか…。

  2. yt__gamer より:

    先生こんにちは!
    先生のメルマガで評価高かったので気になってミッドナイトスワン観に行ってきました!
    先生の言う通り衝撃作で一言では言い尽くせない作品でしたね。

    私は今までトランスジェンダーの方々の訴えは大袈裟だなあと思っていたのですが、こう赤裸々に語られると意識改革をしないとだめだなと思うようになりました。狭い意識の中にいたんだなと反省しました。

    色んな意味でしばらく忘れられそうもない作品です。

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