書評/映画評

流浪の月に号泣!

たった一人でも、濃い「つながり」があれば、
人は生きていける!

映画『流浪の月』を見ました。

これぞ、魂を揺さぶる映画!

ラストシーンでは、号泣。
いや、号泣を超えて、嗚咽(おえつ)。
顔面がクシャクシャで、恥ずかしいほど。

女児誘拐事件の犯人と少女。
15年後二人が再会した。
そこで起きたことは・・・。

ここに描かれるのは、「愛」。
というよりは、「つながり」。
「心の支え」となる存在。
あるいは、「居場所」。

最近の流行で言えば、「心理的安全性」。

そこにいて「ホッとできる」場所や人が、
人間には必要。
それがなかったとして、精神的にかなりキツい。

松坂桃李の、迫真の演技。
広瀬すずも、頑張っている。
幼少期の「更紗」を演じる、白鳥玉季の圧倒的存在感。

『怒り』の李相日監督。
『怒り』は、かなりヘビーで重苦しい作品であった。

本作も、虐待、暴力などヘビーなテーマを扱っている。

しかし、広瀬すずの存在が、「明るさ」と「救い」。
ポジティブに、私たちを照らしてくれる。
それは、強烈ではないけども、
弱々しく、はかなげかもしれないが、「月の光」のようでもある。

対称的なのは、世間の目。
世間の目は、「正義」や「善」ではない。

偏見や差別。自分の価値観での決めつけ。
そして、マスコミやSNSの怖ろしさも描かれる。
しかし、一番怖ろしいのは・・・。

「普通に生きる」ことをゆるさない、世間の厳しさ。
というか、残酷さ。
あるいは、現代社会での「生きづらさ」。
それは、李監督の『怒り』にも、通じる。

全体にセリフは少なく、映像(非言語)で表現される。

それと対称的に、言語化される部分(セリフ)は、
非常に辛辣であり、ナイフのように心をえぐる。

そのコントラストが、またおもしろい。

ラストシーンをどうみるのか?

「破滅」なのか、「救い」なのか?
人によって、見方が分かれるだろう。

私は、圧倒的な「救い」を感じた。
なので、とめどもなく涙があふれるのだ。

『流浪の月』樺沢の評価は・・・ ★★★★☆ (4・7)
(年間ベスト10の上位に入る水準)

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