映画『ヴァチカンのエクソシスト』が、
期待以上におもしろかった。
前半は元祖『エクソシスト』(1973年、ウィリアム・フリードキン監督)と
そっくりの展開ですが、
後半、明らかにされる秘密が、かなり攻めている。
意外な展開。
悪魔憑き。憑依の98%は、精神疾患か脳の病気。
残りの2%が、病気では説明できない。
ということが、冒頭でバッチリ説明されている点が良いです。
「憑依」あるいは「解離」というのは、昔はよく見られた疾患の1つ。
「狐憑き」や動物霊の憑依の症例を昔(30年以上前)、
何人か診たことがあります。
最近は、土着信仰、文化、風土的な背景が弱まっているので、
精神疾患としての「憑依」は、珍しくなっているでしょう。
私は、この分野には非常に関心が高いので、いろいろ調べています。
拙著『父滅の刃』(みらいパブリッシング)の、
16ページにおよぶ『エクソシスト』の解説は必読です。
『ヴァチカンのエクソシスト』は、
カトリック教会の総本山バチカンのローマ教皇に仕えた実在のエクソシスト、
ガブリエーレ・アモルト神父の回顧録
「エクソシストは語る」を映画化したものです。
演出はホラー映画ではありますが、
各地で起こった「悪魔憑き」を
バチカン所属するエクソシストが悪魔払いをしている、
という部分はノンフィクションなのです。
本作は、「悪魔憑き」とは何か?
ということを考えながら見ると、深く楽しめます。
悪魔は、どういうわけか、メンタル的に弱っている人に、取り憑くのです。
つまり、この映画で描かれるケースにしても、
精神疾患と紙一重のところがあるのです。
悪魔が存在するか、しないか。
そういう部分ではなく、「人間の狂気」、
限界状態での心理、自分の弱さを攻撃されたときの、追い詰められたときの動揺。
「魔が差す」という言葉がありますが、
心が弱った限界状況に、異常な心理状態に陥ってもおかしくない。
そこに「悪魔」がいるといわれれば、
あながち間違いではないと感じるのです。
これはホラー映画ではないです。
心理ドラマ、心理サスペンスとして、非常に楽しめた作品でした。
『ヴァチカンのエクソシスト』樺沢の評価は・・・ ★★★★(4・3)
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