書評/映画評

遺伝子 ~遺伝子の最新情報について最もわかりやすく解説した本

【20日間連続書評チャレンジ】第4弾は、

『NHKスペシャル「人体」取材班 のシリーズ人体 遺伝子
健康長寿、容姿、才能まで秘密を解明!』

です。

■ とにかくわかりやすい遺伝子本

この本は、とにかく「凄い」。

2019年に読んだ本のベスト10を選考しようと思っていますが、
「ナンバー1」候補の一つです。

「父親が自殺しているので、自分も自殺するはずだ。
このまま生きていてもしょうがない」

「親戚に統合失調症がいるので、自分も統合失調症になるのか、
心配でしょうがありません」

「父親も母親も頭が悪い。頭の悪い遺伝子を受け継いでいる自分は、
いくら勉強しても無駄ですよね」

といった相談が山程、私のもとに届いています。

全て、間違いです!!
遺伝子というものを、完全に誤解しています。

それを、以前のメルマガでも私なり解説したこともありますが、
いかんせん「遺伝子」というのは非常に難しい。

そして、ここ10年で遺伝子研究は、
飛躍的に進歩して、新しい事実が次々と明らかになっています。

本書は、「遺伝子」の仕組みを、非常にわかりやすく、平易に説明しています。

きちんと読めば「遺伝子」は、
「呪い」ではなく「トレジャー(宝)」である。
と、遺伝子を極めてポジティブにとらえているのです。

以前、
『遺伝子は、変えられる。
──あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実』
(シャロン・モアレム著、ダイヤモンド社 )

という本を紹介しましたが、いかんせん少々難しい。
普段、本を読まない人には、かなりきつい、骨太な一冊です。

『NHKスペシャル「人体」取材班 のシリーズ人体 遺伝子』
は、タイトルにある通り、
NHKスペシャルの内容を本に再録したものです。

ですから、
「万人にわかる」レベルまで、かみくだいて説明されている。

普段、本を読まない人も、
遺伝子について正しい知識を学べる内容になっています。

■ 遺伝子で運命は決まらない

多くの人は、「悪い遺伝子」を持って生まれてきたら、
もう人生が終わりだと考えますが、
最新の遺伝子研究はそれを否定しています。

「生まれ持った遺伝子は死ぬまで不変で」あり、
だからこそ「運命を決めるものと考えられてきましたが、
実は遺伝子には「その働きを根本的に変える仕組み」、
いわば”運命を変える仕組み”があることがわかったのです。

その新たな研究領域こそが、”DNAのスイッチ”、
専門的には「エピジェネティクス」と呼ばれる分野です。

肥満などの体質を決める遺伝子から、記憶力や持久力、
音楽などの様々な能力に関わる遺伝子、若返りや寿命に係る遺伝子まで、
全ての遺伝子にはスイッチがあり、それを切り替えることによって、
遺伝子の働きを変えられる可能性が浮かび上がったのです。

どの細胞の中でも、実際に働いている遺伝子、
つまりスイッチがオンになっている遺伝子は、
全体のほんの一部だけと考えられています。

例えば、がんの遺伝子や統合失調症の遺伝子を持っていたとしても、
そのスイッチがオンにならなければ、心配はいらないのです。

そして、多くの場合は、最初は「オフ」になっているのです、

さらに、がん、認知症、アレルギーなどを防ぐ遺伝子も見つかっていて、
それらの遺伝子をオンにすることができれば、
病気になる確率を大きく減らせるのです。

長生きできる可能性が、大いに広がるのです。

これは、ものすごい「希望」「チャンス」。
病気の予防を根底から変えるような発見です。

■ 遺伝子のオン、オフは何で決まるのか?

では、その遺伝子スイッチのオン、オフは何で決まるのか?

それは、食事、運動、睡眠不足、飲酒、喫煙、精神的ストレスなどです。

「地中海食」のような良い食事をとる。定期的な運動する。
健康的な生活習慣をとることによって、
病気を予防する遺伝子がオンになります。

逆に、睡眠不足、過剰な飲酒、喫煙、精神的ストレスによって、
病気の遺伝子がオンになるのです。

遺伝子のオンオフというのは、「生活習慣」、
つまり後天的な要素の影響が極めて大きいのです。

例えば、親や親戚に、統合失調症やうつ病の人がいると、
自分もそうした病気の遺伝子を受け継いでいる可能性があります。

しかし、
定期的な運動、十分な睡眠、精神的なストレスを避ける
などの健康的な生活習慣によって、悪い遺伝子がオンになることを防げるのです。

統合失調症の遺伝子(おそらくは複数の遺伝子で規定される)を持っていたとしても、
統合失調症を発病しないで済むのです。

ちなみに、先日のYouTube動画で、
大麻(マリファナ)の使用で統合失調症の発病率が5倍になる
という研究を紹介しました。

当然、「薬物の使用」というのも、
悪い遺伝子をオンにする可能性が高いのです。

健康で長生きしたいのであれば、
「たった一回の薬物使用なら大丈夫」ではなく、絶対に避けるべきなのです。

■ 才能を開花させるには?

「父親も母親も頭が悪い。頭の悪い遺伝子を受け継いでいる自分は、
いくら勉強しても無駄ですよね」

「父親も母親も平凡な人です。自分には、何の才能もないので、
努力しても無駄ですね」
という相談があります。

それは、間違いであることが、本書を読めばわかります。

音楽をたくさん聴くと、「聴覚にかかわる神経伝達物質」を作る
“DNAのスイッチ”がオンになり、音色などを聞き分ける能力がアップする
と考えられています。”

そして、iPS細胞の山中伸弥教授は言います。

「昔から、生まれか育ちかとよくいわれますけども、
やはり先天的なものだけでは、いろんな才能というのは説明できない。
生まれてからの努力が大事だっていうのは、
“DNAのスイッチ”が関与している可能性が、
今、少しずつ示唆されています。、」

仮に、あなたが音楽の才能を持っていても、
幼少期に音楽を聴くチャンスが少なければ、
それが花開くことはないのです。

勉強においても同じ。
頭がよい遺伝子があっても、
勉強しなければ、スイッチはオンにはならないのです。

さらに山中伸弥教授は言います。

「スイッチがあるということは、例えば親が音楽も運動の才能がなかったとしても、
環境によって、自分の努力しだいで、もしかしたらオリンピック選手に
なれるかもしれないとか、シンガーになれるかもしれないって可能性が
あるってことですよね。あー、夢がある!」

親が無能であっても、
あなたは「良い遺伝子を受け継いでいる」可能性は十分にあるのです。

努力しない限り、良い遺伝子のスイッチはオンにならない。

ここまで読むと、
「両親は頭が悪いから、勉強しても無駄」
というのは、全くの誤りであることがわかるはずです。

「遺伝子」というのは、
その人の運命を決定づけるものではないのです。

結局のところ、遺伝子も大切だけど、
「努力」や「健康的な生活習慣」が、
ものすごーーーく大切。

ということです。

自分は悪い遺伝子を持っている、と心配な人。
自分は何の才能もない、と自己否定が強い人は、
この本を絶対に読んで欲しい。

本書には、健康に役立つ情報、知識が、ものすごくたくさん含まれています。
「遺伝子」に興味がある全ての人に
強くお勧めした一冊です。

『NHKスペシャル「人体」取材班 のシリーズ人体 遺伝子
健康長寿、容姿、才能まで秘密を解明!』

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